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阿佐霧 峰麿

〈阿佐霧峰麿〉痛みが初めて“名前”を持つとき──言葉が、心の霧に最初の地図を描く瞬間(第二章⑤)

過去の自分がこちらへ半歩だけ近づいてきても、

その正体がすぐ言葉になるわけではなかった。

 

 

胸がざわつく。

疲労が抜けない。

理由の分からない重さが残る。

 

 

だけど、何がつらいのかと問われると

答えは霧のように散っていく。

 

 

 

ただ、本を閉じたあとに残る

“静かなざらつき”だけは、

いつも確かにそこにいた。

 

 

その曖昧な感触が、

ある日ふと短い言葉をまとった。

 

 

 

──「置き去り、かもしれない」

 

 

 

たった一行の言葉なのに、

妙に胸に引っかかる言葉だった。

 

 

言い得てはいない。

けれど、まったくズレてもいない。

 

 

痛みが初めて言葉を手にするときは、

たいていこういう“雑な当たり方”をする。

 

 

 

その言葉は粗くて、あいまいで、未完成だ

けれど、その未完成さがむしろ大事だった

 

 

 

 

私はその言葉を深掘りしなかった。

 

 

追い詰めるように意味を探したり、

綺麗に説明しようとも思わなかった。

 

 

ただ、その“感触”だけをそっと握りしめて、

また次のページへ進んだ。

 

 

 

 

すると別の日、また別の言葉が浮かんだ。

 

 

 

──「追いつけていない気がする」

 

 

 

それが何に対してなのか、

当時の私はまだ分からなかった。

 

 

離婚?

環境の変化?

仕事の緊張?

心身の摩耗?

 

 

全部当てはまるようで、

どれも決定打ではない。

 

 

 

けれど、この一言だけは分かった。

 

 

これは“疲れ”ではない。

“だるさ”でもない。

“ストレス”という便利な言葉でもない。

 

 

……これは、

心が現実より“後ろ”にいる感覚だ。

 

 

 

 

その感覚に名前がついた瞬間、

胸の中で濁っていた霧が、

ほんの少しだけ形を持った。

 

 

 

まだ文章にはできない。

説明すれば破綻するような脆い言葉だ。

 

それでも──

“何かを掴んだ”実感だけが残った。

 

 

 

 

言葉は、痛みの地図になる。

 

 

 

名前を持たない痛みはすぐに霧へ戻るが

一文字でも名前を得た痛みは、

もう以前ほど暴れない

 

 

 

たとえば

「怒り」という名前をつけられた感情は、

ただの混乱ではなくなる。

 

 

「孤独」と名づけられた胸の重さは、

得体の知れない怪物ではなくなる。

 

 

 

それらと同じように、

私の中のざらつきも

 

「置き去り」

「追いつけない」

 

という拙い言葉によって

ようやく“形を持ち始めた”。

 

 

 

言葉にならない痛みは、ただの霧だ

 

 

掴もうとしてもするりと消え、

存在するのに形がないから、

人はいつまでも自分の状態を誤解する。

 

 

 

けれど、霧の一部にでも

短い言葉を書き込めた瞬間、

濃淡が変わり、境界線が浮かび上がる。

 

 

その境界線こそ、回復の入口だった

 

 

この段階では、正確さは不要だった。

丁寧な言語化も、立派な自己理解もいらない。

 

必要なのは、触れられるくらいの

小さな名前”だけ

 

 

そのひとつの言葉が、

心の遅れを取り戻すための

最初の“地図の一点”になる

 

 

 

そして

これは、誰にでも起こり得る。

 

 

 

 

もし今、

 

・言葉にできない胸のざらつき

・説明のつかない焦り

・疲労とは違う重さ

を抱えている人がいるなら、

 

 

それはまだ“名前を持っていない痛み”が

静かにそこにあるだけなのかもしれない。

 

 

 

痛みは、理解する前に名づけるものだ

 

 

 

最初の一文字があるだけで、

心はようやく、

あなたのもとへ戻り始める。

 

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言葉でも、声でも、対面でも──

その日のあなたに合う距離で。

 

そっと寄り添える場所として、

ここにいます。

 

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