〈阿佐霧峰麿〉未来が、まだ残っているか確かめた夜 ── あの一年は、停滞ではなかった(第二章⑨)
「積み残し」という感覚が、
まだ言葉になる直前の頃。
私は、人生の分岐点の前に座っていた。
離婚を選ぶべきか。
もう一年、このまま歩くべきか。
机に向かっても、
答えは簡単には出なかった。
考えようとすると、
思考は同じ場所を何度も回る。
結論に触れそうになるたび、
心が一歩手前で止まった。
当時の二人の関係は、険悪ではなかった。
会話もあり、
生活の空気も荒れていなかった。
ただ一つ、
人生の「軸」に関わる部分だけが、
どうしても交わらなかった。
相手には相手の事情があった。
身体的な不安。
恐怖。
心の準備。
それを責める気持ちはなかった。
けれど私には、私の時間軸があった。
三十代半ば。
これからどう生きるのか。
どこへ向かうのか。
その問いを、
曖昧なまま棚上げすることが、
どうしてもできなかった。
私が離婚の意志を伝えたとき、
相手は「一年だけ待ってほしい」と言った。
その言葉に、
私は明確な反論も、
明確な同意もできなかった。
ただ、
時間だけが流れ始めた。
家庭内別居に似た静かな暮らしの中で、
私は淡々と働き、帰り、
眠る日々を繰り返した。
前にも後ろにも進めず、
心だけが、少しずつ遅れていく。
夜になると、
昼間には抑え込めていた思考が
浮かび上がってきた。
部屋の灯りはついているのに、
どこか暗い。
時計を見るたびに、
「まだこんな時間か」と思い、
次に見ると
「もうこんな時間か」と思う。
決断できない夜は、
何も起きていないようで、
内側では確実に何かが削られていく。
運転中の沈黙。
信号待ちの赤。
待機時間の余白。
その静けさの中で、
私は占いの本を開いた。
現実から逃げたかったわけではない。
自分の可能性を、
冷静に知りたかった。
独学だったため、
読み方は大まかだった。
それでも、
運の波を知ることで、
今の自分がどこに立っているのかが
少しずつ見えてきた。
動くべき時期と、耐える時期。
再婚の可能性。
この一年の意味。
未来を当ててほしかったのではない。
未来が、
まだ残っているかどうかを
確かめたかったのだ。
ある夜、
本を閉じたあと、
不思議な静けさが訪れた。
問題は何も解決していない。
状況も変わっていない。
それでも、
胸の奥の重さが、
輪郭を持った“何か”に変わっていた。
逃げるものではなく、
無視するものでもなく、
扱えるものになっていた。
その瞬間、
私は気づいた。
痛みが形を持つと、
人は未来を描き始められる。
あの一年は、停滞ではなかった。
未来のための初期設定だった。
その理解が、私を静かに、
次のステージへ押し出していった。
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ここにいます。
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