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あぐり

努力が評価されない場所に、居続けるべきか ――火山旅・三爻が教える「去る前の心得」

一生懸命に働いてきた。
必要だと思われるスキルも学び、
礼儀も尽くし、できる限り誠実に振る舞ってきた。

それでも、職場では評価されない。
大きな失敗をしたわけでもなく、
怠けているつもりもない。
ただ、「見られていない」という感覚だけが、
日々、心をすり減らしていく。

「やはり、自分が評価される職場を探すべきなのだろうか」

そんな問いを抱えたとき、
易は 火山旅(かざんりょ)・三爻 を示しました。

この卦は、非常に厳しく、同時にとても誠実な卦です。

火山旅という卦が示す前提

火山旅は、「旅人」の卦。
根を下ろす場所ではなく、
仮の宿に身を寄せている状態を表します。

旅人は、どれほど腕があっても、
どれほど真面目でも、
その土地では“よそ者”です。

評価されないのは、
能力が足りないからではない。
人格が劣っているからでもない。

「ここが、あなたの最終地点ではない」
それが、この卦の最初のメッセージです。

九三爻の原文が語る、最も苦しい局面

九三爻の原文はこうあります。

旅焚其次、喪其童僕、貞厲
(旅の途中で宿を焼き、仕える者を失い、
正しくあろうとしても危うい)

これは、火山旅の中でも
最も心が折れやすい位置です。

・正しいことをしているつもりなのに
・なぜか状況が悪くなる
・居場所を失ったように感じる
・味方もいなくなった気がする

それでもなお、
「自分は間違っていないはずだ」と
歯を食いしばって立ち続けてしまう。

この爻は、
そんな頑張りすぎている人の姿を、
そのまま映し出しています。

評価されない理由は「火が強すぎる」から

ここで誤解してはいけないのは、
この卦はあなたを責めていないということ。

火山旅・三爻は、
能力不足ではなく、
熱意や理想が強くなりすぎた状態を示します。

山の上にある火は、
遠くからはよく見える。
しかし、足元を温めることはできません。

あなたの誠実さや努力は、
今の職場では「高すぎる位置」にある。

だから、理解されない。
だから、評価の言葉が返ってこない。

それは、あなたが劣っているのではなく、
場との噛み合いが崩れているということなのです。

では、評価される職場を探すべきか?

易の答えは、単純な「YES」でも「NO」でもありません。

火山旅・三爻が示すのは、

「今すぐ燃やして去るな。
しかし、ここを終着点だと思うな」

という、非常に中庸な姿勢です。

・感情的に辞める
・すべてを否定して飛び出す

これは、三爻では「宿を焼く」行為となり、
後悔を生みやすい。

一方で、

・評価されないことに耐え続ける
・自分の価値を疑いながら居座る

これもまた、
あなたの火を内側から枯らしてしまいます。

この卦が勧める、現実的な行動

火山旅・三爻が教えているのは、

「旅人として、静かに次の宿を探せ」

ということ。

今の職場では、

・最低限の役割を誠実に果たす
・過剰な自己証明をやめる
・評価で自分を裁かない

その一方で、

・水面下で次の選択肢を探す
・自分が本当に力を発揮できる環境を見極める
・準備を整える

この二つを同時に行うことが、
最も安全で、最も尊厳を守る道です。

心と身体を守るために

この爻が出るとき、
人は自分を責めすぎてしまいがちです。

「もっと頑張ればよかったのでは」
「自分の伝え方が悪いのでは」

けれど、易ははっきり言っています。

これ以上、火を強めるな。

今必要なのは、
頑張り続けることではなく、
自分を削らないこと

結び ― あなたは、旅の途中にいる

火山旅・三爻は、
人生の敗北を告げる卦ではありません。

これは、
**「ここで燃え尽きるな」
という警告であり、
「次の場所がある」
という約束です。

あなたは間違っていない。
ただ、今いる場所が仮宿なだけ。

評価されない場所に、
あなたの価値がないのではない。
あなたの価値を受け取る器が、
そこにないだけなのです。

もし今、
「このままでいいのだろうか」と
心が静かに問いかけているなら、
それは旅立ちの合図。

焦らず、誇りを手放さず、
次の道を整えていきましょう。

易はいつも、
あなたが壊れる前に、
静かに知らせてくれます。

その声に耳を澄ますことが、
次の人生を守る、
最初の一歩なのです。

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