あぐり
お金だけのために人を押し除ける職場を離れたい・・・。
縛られた足をほどくとき ― 雷水解・四爻が教える「正しい離れ方」
人はときに、
「お金のため」「生活のため」「今さら辞められないから」
そうした理由を積み重ねながら、
自分でも気づかぬうちに、心の足元を縛ってしまいます。
お金を稼ぐためなら、人を押しのける。
成果のためなら、誰かの尊厳に目をつぶる。
そんな価値観が当たり前のように漂う職場に身を置きながら、
それでも「ここにいなければ生きていけない」と、
自分を納得させ続けてはいないでしょうか。
今回ご紹介するのは、
「お金を稼ぐためなら、人を押しのけるような職場にとどまるべきか」
という問いに対して立てられた易、
雷水解(らいすいかい)・四爻のメッセージです。
■ 雷水解 ― 凍ったものがほどけるとき
雷水解は、「解ける」「ほどける」「緊張が解消される」卦。
冬の終わり、雷雨が大地を打ち、
雪解け水が流れ出すような象を持ちます。
それは、
長く続いた我慢や抑圧が、
ある日、自然と限界に達する瞬間。
この卦が出るとき、
人はもう「耐えるだけの時期」を終えつつあります。
■ 四爻の言葉 ―「而の拇を解く」
雷水解・四爻の爻辞は、
とても静かで、しかし決定的な言葉です。
「而の拇を解く。朋至りて斯れ孚す。」
――足の親指を縛るものを解け。
そうすれば、真心の通じ合う仲間が現れる。
足の親指とは、
私たちが立っている「基盤」「立場」「依存」です。
そこが縛られていると、人は前にも後ろにも進めません。
つまりこの爻は、こう告げています。
あなたを縛っているのは、外の状況ではない。
「ここにいなければならない」という思い込みだ。
■ 解くべきは「困難」ではなく「縁」
雷水解・四爻が教えるのは、
困難と戦え、ということではありません。
解くべきは、
あなたの価値観をすり減らし、
倫理を曇らせ、
心を硬くさせる 不正な結びつき です。
人を押しのけなければ成り立たない関係。
恐怖や競争で縛られた居場所。
「仕方ない」と自分を説得し続ける日々。
それらは、
あなたの足元に絡みついた縄なのです。
■ 「朋至りて斯れ孚す」― 孤独な解放ではない
大切なのは、
雷水解・四爻が 孤立を勧めていない という点です。
縛りを解いたあとには、
必ず「朋」が来ると、易は言います。
それは、
誠実さを理解してくれる人。
人を踏みにじらずに働ける場。
価値観を共有できる仲間。
今はまだ見えなくても、
縛りを解いた人にだけ、
その縁は自然と引き寄せられてくるのです。
■ とどまるべきか? 離れるべきか?
この卦の答えは、はっきりしています。
「とどまるべきではない。」
けれど同時に、
「衝動的にすべてを壊して飛び出せ」とも言いません。
まず、心の中で縛りをほどくこと。
迎合しないこと。
自分の線を引くこと。
解放は、静かに始めるほど、
傷が少なく、後悔も残りません。
■ 解は、敗北ではない
人を押しのけて得るお金より、
自分を裏切らずに得る一日。
雷水解・四爻は、
それを選び取る勇気を
「正しい解放」と呼びます。
縛られたまま生きることが誠実なのではありません。
誠実さを守るために、離れることもまた、
立派な選択なのです。
もし今、
胸の奥で小さな雷が鳴っているなら、
それは春の兆し。
あなたの人生にも、
解けるべき結び目が、
もう見えてきているのかもしれません。
――
このような「離れるべき時」「とどまるべき時」の判断に迷ったとき、
易は、静かに、しかし正確に道を照らしてくれます。
心の違和感を抱えたままにせず、
必要な方は、どうぞご相談ください。







