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阿佐霧 峰麿

「問題ない一日」の中に残る違和感(第三章⑥)

私はその事実を、

ある日とても静かなかたちで突きつけられた。

 

 

 

理由ははっきりしていなかった。

大きな出来事があったわけでもない。

 

 

失敗した感覚も、

誰かと衝突した記憶もない。

 

 

 

ただ、朝から身体が重く、

思考がどこか噛み合わず、

一つひとつの作業に手応えが薄かった。

 

 

 

とはいえ、仕事が始まれば身体は動く。

 

 

運送の仕事は、考える前に体を使う。

 

 

荷を積み、走り、降ろすうちに血流が上がり、

感覚は次第に現実へ戻っていく。

 

 

一日は完結する。

 

 

 

宵越しの仕事はない。

 

 

決められたルーティンをこなせば、

「今日も無事に終わった」で区切りはつく。

 

 

 

 

だからその日も、

表面的には何事もなく終わった。

 

 

 

達成感はある。

 

 

疲労もある。

 

 

それなりに「やり切った」

という感覚も残る。

 

 

 

けれど、

スッキリした感じだけが、

どこにもなかった

 

 

 

 

以前の私なら、

この違和感を問題だとは思わなかった。

 

 

仕事は回っている。

 

 

生活も破綻していない。

 

 

眠ればまた明日が来る。

 

それで十分だ、と判断していた。

 

 

 

――けれど、

今思えばそれは正確ではない。

 

 

 

生活は、すでに

どこかで破綻していた。

 

 

 

ただ、それを「破綻だ」と見ないことで、

日常だけが辛うじて成立していた

 

 

 

 

家庭内別居に近い状態で

一年を過ごすというのは、

 

関係としては、すでに崩れている。

 

 

 

けれど、それを直視してしまえば、

生活も、心も、一気に崩れてしまう。

 

 

 

だから私は、

見ないことを選んでいた

 

 

見ないことでしか、

生き延びられない時間だった。

 

 

 

 

その日、

心の奥に残った違和感は、

 

その「見ない」という選択の隙間から、

ふと顔を出したものだったのだと思う。

 

 

大きな痛みではない。

 

 

立ち止まるほどの不調でもない。

 

 

ただ、

「何もなかったことにしていいのか?」

 

という、ごく薄い引っかかりだけが

消えなかった。

 

 

 

この頃の私は、

その引っかかりを

無視しなくなっていた。

 

 

「問題がない一日」と

「納得できた一日」は、

必ずしも同じではない

 

 

 

そう気づきはじめていたからだ。

 

 

 

仕事が回ったかどうか。

予定をこなせたかどうか。

 

それだけでは測れないものが、

心の中には確かに存在している。

 

 

 

その存在に気づいてしまった以上、

 

もう以前のように

「まあいいか」で

片づけることはできなかった。

 

 

 

 

私はその違和感を、

良いとも悪いとも判断しなかった。

 

 

ただ、

「ああ、今日は少し薄い一日だったな」

 

そう静かに認識しただけだった。

 

 

 

すると不思議なことに、

それ以上、心は騒がなかった。

 

 

無理に意味づけをしない。

原因を掘り下げない。

改善策も立てない。

 

 

ただ、

今日の感触をそのまま置いておく。

 

 

 

それだけで、

心は余計な疲れ方をしなかった。

 

 

このとき私は、

ひとつの重要なことを理解しはじめていた。

 

 

 

壊れた心で生きる技術とは、

調子の悪い日を

「なかったことにしない」技術なのだ、と。

 

 

問題を大きくしない代わりに、

問題がなかったふりもしない。

 

 

良い日も、

薄い日も、

同じ重さで扱う

 

 

 

それができるようになると、

心は静かに信頼を取り戻していく。

 

 

心は、劇的な変化を求めていない

 

 

ただ、

「気づいてもらえること」を

待っているだけなのだ。

 

 

 

その事実を、私はこの

“問題ない一日”の中で、

はっきりと知ることになった。

 

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そっと寄り添える場所として、

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