唯真伊由
人の未来を預かる立場になって
第1章|第6話
人の未来を
預かる立場になって
外資系の保険会社で、
私はマネージャーとして
新人育成を任されるようになりました。
毎月、入社してくる新人たち。
ほとんどが未経験で、
期待と同時に
大きな不安を抱えていました。
新しい世界に飛び込む決断。
家族の理解。
この選択は正しかったのかという迷い。
私は、
この人たちの人生の一部を
預かっているのだと感じていました。
人には、
強い承認欲求があります。
愛されたい。
認められたい。
役に立つ存在でいたい。
新人の頃は特に、
その思いが不安と絡み合い、
表情や態度に表れます。
私は、
知識を教える前に
まず話を聞きました。
うまくできないことを
責めるのではなく、
できていることに
静かに目を向ける。
それだけで、
人は少しずつ
自分の足で立ち始めます。
数字の世界にいながら、
私は何度も実感していました。
人は、
追い込まれて伸びるのではなく、
強みを伸ばす中で
力を発揮するのだと。
もちろん、
やりがいだけではありません。
結果を出させる責任。
育たなければ、
その人の人生に影響するという重圧。
期待と不安のはざまで、
私自身も
揺れていました。
それでも、
逃げたいと思うより先に、
「やるしかない」と
腹をくくっていました。
気づけば、
キャリアは着実に積み上がり、
評価もついてきました。
けれど、
それを誇らしく語る気持ちは
あまりありませんでした。
ただ、
与えられた役割を
丁寧に果たしていただけ。
その日々が、
自分にとって
とても濃密で、
満たされていたことだけは、
今なら分かります。
あの頃は、
忙しさの中で
感じないようにしていましたが。
それは、
私にとって
仕事の黄金期だったのかもしれません。
この時代が、
後の人生で
大きな意味を持つことになるとは、
まだ知らずにいました。
日々の気づきや、
ふと心に浮かんだことは、
Xでも綴っています。







