芽百マミム
第9章 新しい家での生活

新しい家での生活は、
想像していた以上に穏やかで、あたたかかった。
子どもたちと三人。
余計な緊張のない空間で、
笑い声が自然に増えていく。
特別なことをしなくても、
同じ部屋で過ごし、
同じ時間を共有するだけで、
「楽しい」という感覚が戻ってきた。
私はスポーツジムでの仕事を続けながら、
少しずつ自分の身体と向き合えるようになった。
一時間ある休憩のうち、
三十分は筋トレに使う。
呼吸を感じながら体を動かす。
その時間は、至福の時間。
30kのベンチをもちあげながら
自分を追い込むためではなく、
心と身体を整え、呼吸に集中。
筋肉に意識を向けるほど、
乱れていた気持ちが静まり、
「今ここ」に戻ってくる感覚がある。
身体が変わり始めると、
心も少しずつ軽くなっていった。
焦りや不安に支配される時間が減り、
自分のリズムを信じられるようになる。
食生活は、これまでと変わらず
手作りにこだわっている。
特別なメニューではなくても、
ちゃんと手をかけたごはんを囲む時間は、
私たち三人を自然とつないでくれる。
新しい家での生活は、
劇的な変化ではない。
けれど、心と身体をすり減らさずに
生きられる日常が、ここにはある。
子どもたちの笑顔と、
自分自身の回復を感じながら、
私はようやく
「安心して暮らす」という場所に
たどり着いたのだと思う。
子どもたちの笑顔と、
自分自身の回復を感じながら、
私はようやく
「安心して暮らす」という場所に
たどり着いたのだと思う。
けれど、
その安心は終わりではなかった。
暮らしが整い、
心と身体が落ち着いてくるにつれ、
胸の奥にしまい込んでいた感覚が
少しずつ目を覚ましていく。
このまま守るだけの人生でいいのだろうか。
そう問いかける声が、
静かに、しかし確かに響き始めた。
子どもたちとの時間を大切にしながら、
自分自身の人生も歩んでいく。
その両立は、
決してわがままではないと、
この日常が教えてくれた。
私は、
次の選択を考え始める。
整った先に、
何を信じ、
どんな未来を選ぶのか。
こうして、
物語は
第10章へと進んでいきます。
本日もありがとございました。
次回もまた読みに来てくれたらうれしいです。
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