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風の時代の読書案内 占い師になりたいというあなたへ ――『アルケミスト』パウロ・コエーリョ著

風の時代の読書案内
占い師になりたいというあなたへ
――『アルケミスト』パウロ・コエーリョ著

羊飼いの少年サンチャゴが、「自分の宝物」を求めて旅に出る。
物語の筋立ては、きわめて素朴です。
けれど、その簡潔さの奥には、人が生まれながらにして授かっている使命――
コエーリョの言う「運命(パーソナル・レジェンド)」という思想が、静かに息づいています。

人はそれぞれ固有の役割を持って生まれてくること。
世界は偶然の集合ではなく、象徴と兆しに満ちていること。
そして、それらを読み取る感性こそが、人生を導く羅針盤になること。
さらに、アルケミー(錬金術)とは、金属を金に変える技術ではなく、
人間の意識そのものが成熟し、変容していく過程を指すのだ――
この物語は、そうした真理を、説教ではなく物語として語りかけてきます。

副題に「夢を旅した少年」とあるように、この物語は夢から始まります。
それも、はっきりとした理想や希望ではなく、
繰り返し見る、意味のわからない夢。
サンチャゴはその夢の解釈を求めてジプシーの占い師を訪ね、
偶然出会った「王」と名乗る老人から、進むべき道を示されます。

旅の途中で彼は、強盗に遭い、すべてを失い、
クリスタルを売る店で働きながら日銭を稼ぐ日々も経験します。
それでも、夢に示された方向――エジプトへ向かう旅をやめない。
注目すべきは、彼が旅に出た理由が、
「明確な目標」や「合理的な判断」ではなかったことです。
ただ、同じ夢を何度も見た。
それだけでした。

つまりこの旅は、
表面的な意思決定ではなく、
もっと深い層――無意識や魂の領域からの呼びかけによって始まったのです。

物語の中で、少年は見知らぬ老人からこう告げられます。

「この本は、世界中のほとんどの本に書かれていることと同じことを言っている。
人は自分の運命を運ぶことができない、と言っているのだよ。
そして最後に、誰もが世界最大のうそを信じている、とね」

世界最大のうそとは何かと問う少年に、老人は答えます。

「人は人生のある時点で、自分に起こることをコントロールできなくなり、
宿命によって人生を支配されてしまう、という考えじゃ。
それが世界最大のうそなのだよ」

そしてこう続けます。

「運命とは、お前がいつもやり遂げたいと思ってきたことだ。
誰でも若い頃は、自分の運命を知っている。
だが時が経つにつれ、不思議な力が、
それは不可能だと思い込ませてしまうのだ」

人は、驚くほど早い時期に、
自分がなぜ生まれてきたのかを、直感的に知っている。
けれど現実の重さや、周囲の価値観、失敗への恐れが、
その確信を少しずつ眠らせてしまう。
この場面で少年の胸に蘇るのは、
忘れていた「運命への確信」そのものです。

風の時代とは、
これまで疑われなかった価値観や、
当たり前とされてきた生き方を、
あらためて問い直す時代です。
肩書きや立場よりも、
何を感じ、何を読み取り、どんな意味を紡ぐのかが問われていく。

占い師になりたいと思う人にとって、
『アルケミスト』は単なる成功譚ではありません。
兆しを読む感性、
内なる声に耳を澄ます勇気、
そして、遠回りや喪失さえも意味へと変えていく視点を、
この物語は静かに教えてくれます。

ページをめくるたびに、
新しい道へ踏み出すための、小さな確信が芽生えてくる。
風の時代を生きるための読書として、
この一冊は、今も変わらず確かな光を放っています。

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