あぐり
仕事が減ってしまいました― 地天泰・初爻が示す「流れを呼び戻す一歩」
二十代のクリエイターの方からのご相談。
「仕事が減ってしまいました。どうすればよいでしょうか。」
そこで立てた易は、地天泰(ちてんたい)・初爻。
この卦は、一見静かで穏やかですが、実は内側に大きな循環の力を秘めています。
地天泰とは、上に地(坤)、下に天(乾)を置く形。
本来、軽いものは上へ、重いものは下へと落ち着くはずです。
しかしこの卦では、天が下にあり、地が上にある。
上下が反転しているようでいて、実は気が通い合い、陰陽が交わり、万物が育つ配置なのです。
「泰」は、やすらか、通じる、発展するという意味。
外側の現象が一時的に縮小していても、内側では交流が始まっている。
仕事が減ったという事実だけを見れば停滞に見えますが、卦は「通じ始める兆し」を示しています。
そして初爻。
まだ芽の段階です。
爻辞にはこうあります。
「茅を抜けば、茹にして其の彙を抜く。征けば吉。」
一本の茅を引き抜くと、地下でつながる根が連なって抜けていく。
つまり、一つの動きが連鎖を生む、ということです。
ここが核心です。
今は大きく動くときではありません。
しかし、動かないでよいという意味でもありません。
小さな、しかし誠実な一歩を踏み出すこと。
過去のクライアントに、さりげなく近況を伝える。
新しい方向性で、小さな作品を公開する。
発信の言葉を、今の自分に正直なものへと整える。
大きな営業戦略よりも、一本の茅を抜くような行動。
それが、地下の根を揺らします。
また、この卦は「通じ合い」の象徴でもあります。
創作が独りよがりになっていなかったか。
逆に、迎合しすぎて自分の軸を失っていなかったか。
さらに具体的に見直すことも大切です。
期日を守っていたか。
クライアントの意図を丁寧に汲み取っていたか。
自分のこだわりが強すぎるあまり、相手の要望を軽んじていなかったか。
金額や条件について、曖昧な姿勢になっていなかったか。
泰は、内と外が正しく通じるときに生まれる卦。
焦りは流れを滞らせます。
今は焦って探し回るより、整えて通すときです。
地天泰・初爻は凶ではありません。
むしろ静かな吉兆。
「小さく動けば、流れは戻る。」
若い創造者にとって、仕事の減少は否定ではありません。
それは、古い根が整理される合図かもしれない。
冬の土の下では、すでに春の根が絡み合っています。
地上からは見えなくても、地下では確かに連なっている。
創作の流れもまた、目に見える依頼だけで決まるものではない。
人と人との間を流れる、目に見えぬ水脈がある。
一本の茅を抜く勇気。
その一歩が、思いがけぬ連鎖を生む。
若さとは、未完成であることではなく、
これからいくらでも通じていける力を持つこと。
流れは、止まってはいない。
今は、その通路を静かに整えるときなのです。







