あぐり
疲労した夜、冷酷な指摘に折れた心をどう立て直すか?
遅くまで残業し帰宅したところ、上司からメールで書類の間違いを指摘されました。私のミスではあるので、疲労困憊し切っていたところに冷酷な指摘が入り、その上司への信頼がすっかりなくなってしまいました。今後上司との接し方をどうすればいいでしょうか? というご相談。
易を立てたところ、
雷天大壮(らいてんたいそう)・二爻。
まず「大壮」とは何か。
上に震(雷)、下に乾(天)。
天の剛健さの上に雷が鳴る。
勢いが強い。力がみなぎる。内側から衝動が湧き上がる卦です。
けれども――
この卦は「力がある」ことと「正しい」ことは同じではない、と教える卦でもあります。
勢いがあるとき、人は自分の正しさに酔いやすい。怒りもまた力です。疲労の中で受けた冷たい言葉は、あなたの内側の雷を鳴らしたのでしょう。
では二爻。
二爻はこう言います。
「貞にして吉。」
ただそれだけ。
短い。しかし深い。
ここでいう「貞」は、意地ではありません。
「正しさにとどまること」。
自分の中心を外さないこと。
二爻は内卦(乾)の中正の位置にあります。
真ん中。ぶれない場所。
つまりこれは、「力はあるが、まだ爆発させる時ではない」という位置なのです。
あなたはいま、怒りというエネルギーを持っています。
しかしこの卦は言います。
ぶつけるな。
歪めるな。
ただ、正しさにとどまれ。
今回の件は、あなたのミスであることは事実。
けれど、相手の言い方に温度がなかったことも事実。
二つは別問題です。
ここでやりがちなのは、
① 表面上は従うが心を閉ざす
② 怒りをため込み反撃の機会をうかがう
③ 急に距離をとる
けれど大壮二爻は違う。
「正面から受け止め、しかし感情で判断しない。」
信頼がなくなった、と感じたのは自然です。
しかしその感情を「事実」にしてしまわないこと。
疲労は感情を増幅させます。脳科学的にも、極度の疲労時は否定的評価が強まる傾向があります。これはデータがあります。つまり、あなたの反応は生理的にも説明がつく。
だからこそ二爻は冷静です。
上司との今後の接し方は――
・業務は淡々と正確に
・感情的評価は保留
・必要な報連相はむしろ丁寧に
・心の中で「私は私の軸で仕事をする」と決める
大壮は「力の卦」です。
その力を外へ向けるのではなく、精度へ向けよ、と言っている。
今回の出来事は、あなたの仕事の質を一段引き上げる契機にもなります。
大壮は成長のエネルギーでもあります。
ここで拗ねると「暴走」。
ここで整えると「成熟」。
雷は恐ろしいが、雷は空気を浄化もします。
あなたの中の怒りを、精度に変えていく。
それが二爻の「吉」です。
信頼を戻すかどうかは、今決めなくていい。
ただ、あなたの正しさを保ち続ければ、相手の姿もいずれ見えてきます。
力がある人ほど、静かでいられる。
雷天大壮二爻は、
「強さとは、静かに立つことだ」と教えています。
怒りを燃料にして、より精密な自分へ。
それがこの卦の美しい使い方です。







