あぐり
無視されたと感じた夜に ― 雷地豫が教える静かな尊厳
オンライン講座に参加したのに、自分だけが取り残されているように感じる――
この感覚は、想像以上に心を消耗させます。
画面の向こうでは誰かが笑い、頷き、会話が進んでいく。
しかし自分の発言は拾われず、問いも流される。
それが偶然なのか、意図なのか分からないからこそ、胸の奥に小さな棘が残るのです。
このようなご相談に対し、易を立てたところ出た卦が「雷地豫(らいちよ)」二爻でした。
雷地豫とは、地の上に雷が鳴る姿。
大地は静かで重く、雷は突如として響く。
この卦は本来、「よろこび」「人が集い、場が動き出す気配」を示します。
音に人が引き寄せられ、空気が躍動する状態です。
けれども二爻は、その中心に近い位置にありながら、派手に踊る役ではありません。
爻辞には「石のように動かず、終日を待たずして吉」という意味が含まれています。
ここで語られているのは、外の騒ぎに心を奪われない姿勢です。
雷は鳴ります。
しかし大地は揺れません。
今、あなたの心に鳴っているのは「無視されているのではないか」という雷鳴です。
けれどその音に反応して感情を激しく動かすことは、この卦の示す道ではありません。
易はまず、「本当に意図的かどうかを確定せよ」とは言いません。
人は疲れているときほど、他者の反応を否定的に解釈しやすいものです。
オンラインという環境では、単純なタイムラグや主催者の視野の狭さ、偶然の流れによって発言が拾われないことも珍しくありません。
二爻は「中正」の位置。
感情に溺れず、しかし卑屈にもならない。
堂々と、静かに、自分の軸を保つことが吉なのです。
では具体的にどうすればよいのでしょうか。
まずは一度、短く、明確に、淡々と発言してみること。
余計な感情を乗せず、事実と意見だけを伝える。
それでも明確な排除があるのなら、その時に次の判断をすればよいのです。
大切なのは、相手の態度によって自分の価値を測らないこと。
雷地豫は本来「楽しむ」卦です。
もしその場があなたにとって喜びをもたらさないなら、その場があなたの魂の居場所ではない可能性もあります。
世界は広く、学びの場は無数にあります。
ひとつのオンライン空間が、あなたの存在意義を決めることはありません。
雷は一瞬の響き。
大地は変わらずそこに在る。
あなたは、外の音に揺れる存在でしょうか。
それとも、静かに自らの価値を保つ存在でしょうか。
この卦が示しているのは、「今すぐ戦え」でも「今すぐ去れ」でもありません。
まずは心を石のように整えよ、ということです。
動くべき時は、必ず来ます。
しかしその前に、自分の中心が静かであること。
そこにこそ、本当の吉が宿るのです。







