あぐり
結びてこそ流れ出づ ― 水地比四爻にみる「売れる」という現象
どうしたら売れるのか。
この問いは、現代を生きる私たちにとって、切実でありながら、どこか焦りを含んだ響きを持っています。売上、数字、成果。結果を求める心は自然です。しかし、易を立てて出た卦は水地比(すいちひ)・四爻でした。
水地比とは、「比ぶ」「親しむ」「結ぶ」という意味を持つ卦です。
上に水、下に地。水は低い方へと流れ、地と自然に親しみます。そこには争いも無理もありません。ただ、引き合う力があるだけです。売るという行為を、押し出す力ではなく、「引き合う力」として捉え直すこと。それがこの卦の第一の示唆です。
水地比は競争の卦ではありません。
勝つか負けるかではなく、誰と結ぶかが問われます。
四爻は中心(五爻)に最も近い位置にあります。主役ではないが、中心と強く結びつくことで力を得る場所です。爻辞には「外に比す。貞にして吉」とあります。外と結べ。誠実であれば吉。内に閉じこもるな、と。
売れないとき、人は対象を広げたくなります。価格を下げ、発信を増やし、数で押そうとする。しかしこの卦は逆を告げます。広げる前に、結べ。
誰のための作品なのか。
誰に届いたら、本当に嬉しいのか。
その「具体的な一人」を見つめよ、と。
現代のマーケティング理論でも、人は論理ではなく共感で動くとされています。脳には他者の感情を写し取る働きがあります。共鳴が起きたとき、人は自然に動く。これは神秘ではなく、神経科学の領域の話です。水地比は極めて合理的なのです。
四爻はまた、正しい提携を示します。
一人で売ろうとしなくてよい。理念を理解してくれる媒体、紹介者、仲間。あなたの世界観と響き合う「外」と結ぶこと。それが流れを生みます。
ただし条件があります。
誠です。
打算的な結びつきは、水を濁らせます。
理念を共有できない相手と結べば、流れは止まる。
売れるとは、市場を支配することではなく、共鳴圏を築くことなのです。
ここで一度、自分に問いかけてみてください。
今の発信は、自分の中心と一致しているでしょうか。
市場に合わせるあまり、本来の響きを薄めてはいないでしょうか。
水は争わず、しかし必ず道を作ります。
硬い岩も、長い時間をかけて削っていく。
売上は結果であり、原因ではありません。
原因は関係性。信頼。共鳴。
水地比四爻はこう告げています。
外と誠実に結びなさい。
中心に近づきなさい。
内輪に閉じるな。
売れるかどうかは、最後に自然に現れる現象です。
無理に掴もうとすれば逃げる。
しかし正しく結べば、流れは生まれる。
水は低きに流れる。
誠は人を引き寄せる。
焦らず、濁らず、結ぶ。
そこから、静かに売れ始めるのです。







