あぐり
「なぜ私だけが尻ぬぐいをしているのか――上司の配置換えで現場が揺らぐとき、巽為風三爻が教える『従いすぎない働き方』」
「長期間のプロジェクトを任されましたが、必要な人材を上司がいきなり配置換えしたりして、継続が難しいと感じています。会社の場当たり的な対応、計画性のなさに嫌気がさしています。どうすればいいでしょうか?」
易を立てたところ、巽為風三爻
巽為風(三爻)は、静かな卦でありながら、とても現実的な警告を含んでいます。
風は形を持たず、隙間に入り込み、状況に合わせて姿を変えるもの。
巽とは「従う」「入り込む」「浸透する」という性質を持ちます。
組織の中で働く人間関係や調整力、空気を読む力を象徴する卦でもあります。
ですから今回のご相談――長期プロジェクトで人員が突然動かされ、計画が揺らぐ状況――は、まさに「巽」の世界そのものです。上から吹いてくる風が一定ではない。方向が定まらない。現場が翻弄されやすい状態です。
では三爻は何を語るのでしょうか。
三爻は「風が強すぎる場所」です。
上と下の板挟みになりやすく、周囲の意向に合わせようとして動き続け、結果として自分の軸を失いやすい位置でもあります。
古典的には、巽三爻には「頻巽(ひんそん)」という言葉が添えられます。
これは「何度も従う」「過度にへりくだる」「必要以上に相手の顔色をうかがう」という意味合いを持ちます。
つまり――。
本来は柔軟さが長所であるはずなのに、気づけば“迎合”になってしまう。
調整役として頑張るほど、自分ばかりが疲れていく。
今回の状況でいえば、
・会社側は場当たり的に人員を動かす
・現場の継続性より短期的判断が優先される
・そのしわ寄せを受け止めているのがあなた
という構図です。
ここで易ははっきり言っています。
「あなたが悪いのではない。ただし、従いすぎている。」
三爻は凶ではありません。しかし「疲労の兆し」があります。
風に合わせて向きを変え続ければ、いつか根が抜ける。
誰にでも良い顔をする必要はないのに、必要以上に自分を下げてしまっていないでしょうか。
巽は本来「徳をもって人を動かす力」です。
下から静かに浸透していく影響力。媚びることとはまったく違います。
三爻が戒めているのは、
「現場が回らないという不安から、自分を犠牲にしすぎること。」
です。
長期プロジェクトを任されるというのは、組織があなたの能力を認めている証拠でもあります。本当に力のない人には任せません。
それなのに、
・無理な配置換えにも黙って合わせる
・計画変更の尻ぬぐいを当然のように引き受ける
・摩擦を避けて意見を飲み込む
これが続けば、巽三爻は「悔いあり」となります。
ではどうすればよいのか。
易は「逆らえ」とは言いません。巽は戦う卦ではないからです。
しかし同時に、「風向きを読む者が主導権を持つ」とも教えます。
つまり、
静かに線を引くこと。
例えば。
必要な人材が外されたなら、「この条件では成果責任が変わります」と事実として共有する。
無理なスケジュールなら、「現実的な到達点」を提示する。
感情で抗うのではなく、“構造で示す”。
これが巽の強さです。
そしてもう一つ。
本当にこの人になら関係を続けたいと思える人だけに礼を尽くす。
これは非常に重要です。
巽は「風の連なり」。つまり影響力の連鎖です。
誰の風に乗るかで人生の方向が変わる。
100人に好かれる必要はありません。
むしろ巽三爻では、それをやろうとすると消耗します。
風は全部を同時に追えない。
信頼できる人、理念を共有できる人、仕事観が通じる人。その「数人」と深く結ぶほうが、結果として道が開けます。
会社の場当たり的対応に嫌気がさしている感覚も、自然なものです。
それはあなたの中の「構造を見る目」が育ってきた証でしょう。
巽為風三爻はこう語っているように思えます。
――柔らかくあれ。しかし軽くなるな。
――従え。しかし自分を売り渡すな。
風は見えませんが、大地を変えます。
静かに方向を選び始めたとき、あなた自身が「風向きを変える側」へと移っていくはずです。







