あぐり
「この人、自分のことしか考えていない」と感じたとき――嫌悪感を、そのまま真実にしない
「どうしても、人と話していると嫌悪感が湧いてくるんです」
そんなご相談がありました。
話しているうちに、
「この人、自分のことしか考えていないな」
「結局、自分の話がしたいだけなんだろうな」
そんな感覚が湧き上がってくる。
最初は普通に話しているつもりなのに、相手のちょっとした言葉や態度が気になり始める。
そして、一度気になってしまうと、もう相手のすべてが嫌になってくる。
相談者の方は、そんな自分にも疲れていました。
「もっと穏やかに人と付き合いたいんです。でも、どうしても嫌だと思ってしまうんです」
と話されました。
人に嫌悪感を持つ。
こういう感情が出てくると、多くの人はまず自分を責めます。
「私って性格が悪いのかな」
「もっと人を受け入れないといけないのかな」
けれど、感情というのは、命令して消せるものではありません。
嫌だと思ったのなら、
まずは、
「私は今、この人を嫌だと思っている」
と認めるところから始まります。
問題は、嫌悪感を持つことではありません。
その嫌悪感を、
そのまま相手の真実だと思い込んでしまうこと
なのかもしれません。
このご相談でタロットカードを引いたところ、
出たのは、
ワンドのペイジ・逆位置
でした。
ワンドのペイジは、本来とても若々しい火を持つカードです。
「これは何だろう」
「もっと知りたい」
「ちょっとやってみたい」
そんな好奇心や素直な情熱を表します。
ところが逆位置になると、その火が少し不安定になります。
好奇心より先に、反応してしまう。
相手を知る前に、
「この人はこういう人だ」
と結論を出してしまう。
まるで小さな火花が、あっという間に燃え広がってしまうような状態です。
たとえば、相手が自分の話ばかりしている。
そこで、
「この人は自分のことしか考えていない」
と思う。
もちろん、本当にそういう人なのかもしれません。
でも、もしかすると、
緊張して自分の話ばかりしてしまう人なのかもしれない。
人との距離の取り方がわからないのかもしれない。
沈黙が怖くて、一生懸命しゃべっているだけなのかもしれない。
まだ本当のところは、わかりません。
ワンドのペイジ逆位置は、
「相手を知る前に、心の中で物語を完成させていませんか」
と問いかけているように見えました。
ここで大切なのは、
相談者の感じた違和感を否定することではありません。
「そんなふうに思ってはいけません」
と言ってしまえば、自分の感覚まで信用できなくなります。
そうではなく、
感覚と事実を分ける。
たとえば、
「この人は自己中心的だ」
ではなく、
「私が話している途中で、三回自分の話に戻った」
と見てみる。
「思いやりがない人」
ではなく、
「私が話した内容について、一度も質問がなかった」
と見る。
すると、
嫌悪感という大きな塊が、
少しずつ具体的な事実に分かれていきます。
この違いは、とても大きいのです。
「私はこの人が嫌い」
と思っていると、相手の存在そのものが重たくなります。
けれど、
「私は、この人のこの態度が嫌だった」
とわかれば、
距離を取る。
話題を変える。
付き合い方を変える。
という現実的な選択ができるようになります。
そしてもう一つ。
このカードには、少し厳しい見方もあります。
もしかすると相談者の中には、
「人はこうあるべき」
という基準が、とても強くあるのかもしれません。
人の話はきちんと聞くべき。
相手を思いやるべき。
自分の話ばかりしてはいけない。
こうした価値観そのものは、決して悪いものではありません。
むしろ、人との関係を大切にしてきたからこそ持っている基準でしょう。
ただ、その基準が強くなりすぎると、
相手の未熟さや不器用さを見つけるたびに、
心の中で減点が始まります。
「今の言い方、嫌だな」
「また自分の話」
「やっぱり、この人はダメだ」
そうやって、知らないうちに人を採点するようになる。
すると、
嫌いな人が増えるというより、
人を嫌いになる材料を、心が探すようになってしまうことがあります。
おそらく、このご相談で大切なのは、
嫌悪感をなくすことではありません。
むしろ、
嫌悪感が湧いたとき、
すぐに相手を断罪しないこと。
「私は今、嫌だと感じた」
そこで、一度止まる。
そして、
「では、この人は実際に何をしたのだろう」
と見る。
この一呼吸が入るだけで、
人との関係はずいぶん変わってきます。
私は相談者の方に、
こんなふうにお伝えしました。
嫌悪感を、そのまま真実にしなくていい。
嫌いだと思ってもいい。
腹が立ってもいい。
不快に感じてもいい。
でも、
「私はそう感じた」
ということと、
「この人はそういう人間だ」
ということの間には、
少し距離を置いてみる。
その距離が、
自分自身を守ってくれます。
そして興味深いことに、
ワンドのペイジは本来、
好奇心のカードです。
だから、
「なんなの、この人」
と思ったときに、
ほんの少しだけ、
「この人は、どうしてこういう話し方をするんだろう」
と見方を変えてみる。
相手を理解しなければならないわけではありません。
許さなければならないわけでもありません。
ただ、
嫌悪から断罪へ行かず、嫌悪から観察へ行く。
それだけです。
人間関係が苦しくなるとき、
私たちは相手のことばかり見ています。
でも本当は、
相手を通して、
自分が何に反応しているのか。
何を大切にしているのか。
何を許せないと思っているのか。
そんな自分自身の輪郭が見えてくることがあります。
嫌悪感は、
ただ消すべき感情ではありません。
ときには、
「あなたはここを大切にしている」
と教えてくれる感情でもあります。
ただし、
その感情に人生のハンドルまで渡さないこと。
感じることと、
決めつけることは違います。
あなたにも、
「なぜかわからないけれど、この人が苦手」
と思う相手はいませんか。
もしかすると、その人そのものが問題なのではなく、
その人の中に、
あなたが強く反応する何かがあるのかもしれません。
人間関係で苦しくなったとき、
「どうしてあの人はああなの」
と考えるだけでは、なかなか答えは見つかりません。
そんなとき、
カードや命盤を通して自分の反応を少し離れたところから眺めてみると、
今までとは違う景色が見えてくることがあります。
占いは、
相手を裁くためのものではありません。
自分がどこで傷つき、どこで反応し、何を大切にしているのかを知るためのもの。
そこが見えてくると、
人に振り回される時間が少しずつ減り、
自分の人生へ戻っていけるのだと思います。
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