唯真伊由
頼ることを、体が先に覚えていた
第2章|人間関係・役割編
第8話
頼ることを、体が先に覚えていた
母のことで状況が動き始めた頃、
私はようやく気づき始めていました。
これは、
一人で抱えきれる量ではないな、と。
施設に入ったと思ったら、
また出ることになり、
次の場所を探す。
それが一度で終わらず、
何度も繰り返されました。
判断すること。
手続きをすること。
荷物を片付けること。
やることは山ほどありました。
楽な状況ではありませんでした。
でも、止まるわけにもいきませんでした。
そんな中、
姉が来てくれるようになりました。
一か月の間に、
三泊四日を何度か。
決して短い滞在ではありません。
さらに、姉妹のように育ったいとこも加わり、
三人で動く時間が増えていきました。
母を連れて移動し、
部屋を片付け、
必要な話を一つずつ決めていく。
結果的に、
三か月ほどの間に、
母の居場所は三度変わりました。
今振り返ると、
確かに大変な時期でした。
けれど、
不思議と「孤独だった」という感覚は
あまり残っていません。
困ったことを、
困ったまま話せる相手がいたからです。
分からないことを、
分からないと言える関係がありました。
三人でいると、
話は自然と続きました。
重たい話の合間に、
どうでもいい話も混ざって、
それが少し、救いになっていました。
頼るというのは、
誰かにすべてを任せることではありません。
一緒に考えてもらうこと。
そばにいてもらうこと。
弱音を聞いてもらうこと。
その一つひとつを、
私は少しずつ、体で覚えていったのだと思います。
母の件は、
簡単なことではありませんでした。
それでも、
人と助け合う感覚を
久しぶりに思い出した時間でもありました。
人は、
一人で強くなるのではなく、
関係の中で、しなやかになっていく。
この頃の私は、
まだそれを言葉にできるほど
整理できてはいませんでした。
それでも、
折れずに立ってはいました。
それだけで、
十分だったのだと思います。
✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧ ⋯ ✧
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
日々ふと心に触れた気づきや、
感じたことをXにそっと綴っています。







