あぐり
風が雷を導くとき――恋は「居場所」を変える
風が雷を導くとき――恋は「居場所」を変える
今週の恋愛運はというご相談。
易に問いかけた。
得られた卦は、風雷益・四爻。
益――増える、広がる、潤う。
だがこの卦が語るのは、感情の高揚や出来事の多さではない。
それはむしろ、関係の「拠点」が静かに移り変わる予兆である。
易経において、風雷益は、上に風、下に雷を配す。
雷が動きを生み、風がそれを遠くまで運ぶ。
小さな働きが、やがて広い世界に波及していく象である。
だが四爻は、その勢いのただ中にあって、なお慎みを失わぬ地点だ。
爻辞はこう告げる。
「中行、公に告げて従わる。依りて國を遷すことを為すに用うるに利ろし。」
ここでいう「中行」とは、妥協でも優柔不断でもない。
偏らず、誇張せず、恐れにも溺れない、芯の通った姿勢である。
そして「公に告げる」とは、感情をぶつけることではなく、
相手に伝わる言葉と態度で、自らの立場を明らかにすることを指す。
恋愛において、この四爻が現れるとき、
多くの場合、関係はどこか宙づりになっている。
近いようで遠い。
続いているようで、定まっていない。
安心して立てる場所が、まだ見えない。
「國を遷す」とは、まさにこの心の居場所の移動である。
これまで慣れ親しんだ曖昧さ、期待と我慢が混ざり合った関係から、
別の地平へと歩み出す決断。
それは相手を変えるための行動ではない。
自分が、どこに立つ人間であるかを示す行為だ。
四爻が教える恋の作法は、静かだ。
問い詰めない。
試さない。
駆け引きもしない。
ただ、誠実に、過不足なく、
「私はここに立つ」と言葉や態度で示す。
不思議なことに、この卦では、
それが受け入れられるか否かが、最重要ではない。
「従わる」ことがあれば、関係は一段深い場所へ移る。
だが、もし従わることがなかったとしても、
それは失敗ではない。
誤った拠点から離れるという、正しい益なのだ。
小象伝は言う。
「以て志を益するなり。」
この一週間で育つのは、相手との関係以上に、
あなた自身の志である。
どのように愛したいのか。
何を軽んじず、何を譲らないのか。
その輪郭が、はっきりと浮かび上がる。
恋は、風のように移ろいやすい。
だが雷が鳴るとき、空気は一変する。
躊躇の湿り気が払われ、
大地は新しい雨を受け取る準備を始める。
風雷益・四爻の恋愛運とは、
劇的な出来事を約束する卦ではない。
それは、正しい位置に立つ勇気が、世界を少し動かすという卦だ。
静かに放たれた一言。
整えられた一つの態度。
それが、関係の地図を書き換える。
恋が深まるときも、
終わるときも、
そこには必ず、益がある。
志が増し、魂の居場所が更新されるという、
確かな益が。
この一週間、風と雷は、あなたの内側で出会っている。
その合図を、どうか聞き逃さぬように。







