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正しさを振りかざさず、誇りを失わずに去るために

正しさを振りかざさず、誇りを失わずに去るために

――雷山小過・二爻が示す「賢い撤退」の智慧

人を押し除けて仕事を奪い合う。
目先の利益だけを基準に、他者の尊厳や積み重ねた時間を顧みない。
そのような職場の空気に、知らず知らず心が削られていく――
これは決して珍しい話ではありません。

耐えがたい。
もう離れたい。
けれど、確かにお世話になった人もいる。
一刀両断に関係を断ち切ることができず、心は宙づりになる。

そのような問いに対し、易は雷山小過・二爻を示しました。

雷山小過は、「大きな理想を掲げて突き進むべき時ではない」ことを告げる卦です。
正義を語れば通じる世界ではない。
むしろ、正しさを武器にした者から傷ついていく――
そうした歪んだ場に身を置いているとき、この卦は静かに現れます。

二爻の爻辞はこう語ります。

過其祖、遇其妣。不及其君、遇其臣。无咎。

祖を過ぎ、妣に遇う。
君には及ばず、臣に遇う。
それでも、咎めはない。

この言葉が示しているのは、
「飛び越えないこと」
「大義に手を伸ばさないこと」です。

本来であれば、正しい上司、理解ある組織、理想的な判断者――
そうした「君」に訴えかけたくなるでしょう。
しかし今は、その道を選ぶべきではない、と易は言います。

代わりに大切にすべきは、
日々顔を合わせる現場の人、
静かに気遣いを向けてくれた年長者、
ほんの小さな、しかし確かな人の縁。

雷山小過・二爻は告げます。

大きな正義を掲げるな。
戦場を広げるな。
ただし、縁まで切り捨てるな。

これは敗北ではありません。
ましてや逃避でもありません。
「生き残るための知恵」です。

今すぐ辞めたい。
けれど、今すぐ辞められない。
この矛盾に対し、易は明確な態度を示します。

――決断は、すでに心の中で終えてよい。
――ただし、去り方は低く、静かに、小さく。

怒りをぶつけない。
正論で場を裁かない。
改革者になろうとしない。

仕事は淡々と、必要な分だけ。
余計な主張をせず、評価も求めない。
ただ一人か二人、心に残る人への礼だけを果たす。

雷は鳴り響いても、山は動きません。
ならば、雷の下をすり抜けるしかない。

雷山小過・二爻が「无咎」と言い切るのは、
そのように去る者には、
恥も、罰も、後ろめたさも残らないからです。

正しさを証明する必要はありません。
この場所で理解されなくても、構わない。
あなたの価値は、ここで決まるものではないのです。

いまは、正しく去るための準備期間
声高に叫ばず、誇りだけを胸に抱き、
静かに次の地平へ向かうとき。

雷山小過・二爻は、
その歩みを「最も賢い撤退」として、確かに許しています。

去ることは、負けではない。
生き方を選び直す、ひとつの勇気なのです。

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