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曽我部 キキョウ

趣味の取り扱い説明書

鹿威しが音を立て、

うつむき加減の若い二人がいて、

何を話せばいいか、戸惑っている。

 

昭和なお見合いの風景です。

 

「ご趣味は、何ですか?」

「音楽鑑賞です」

 

友だちの友だちに会ったとき。

どういう知り合い?の次とまでは言いませんが

結構な高確率で尋ねるのが

「趣味は?」

 

そして昔あった、JIS規格の履歴書には

「趣味・特技」を書く欄が存在していました。

 

人と会ったら趣味を聞け、と

言わんばかりに、「趣味は何?」を

誰かれなく聞いていたかもしれません。

 

けれども、初めて会った人や、

今後会わないかもしれない人に、

本当の趣味について、細かく言いますか。

 

おそらく、ですが。

当たり障りのない趣味一覧から選ぶ感覚、

という人も多くないでしょうか。

 

読書に音楽鑑賞、映画鑑賞にスポーツ観戦。

 

かなりの大枠しか答えません。

それを聞いても、その人のことなど、

ほぼ分からないのが現実です。

 

実際に自分の趣味を振り返ってみてください。

 

趣味というかどうかわからないけど。

いろんな色のボールペンを集めるのが好きで。

ノートの角に、パラパラ漫画を書くのが好きで。

知らない土地に行って、道端の花を見るのが好き。

 

結局のところ、その人が分かるような趣味とは、

「え、そこ!?」と驚いてしまうような、

その人なりのこだわった部分だったりするわけです。

 

どちらかというと、親しくなってから

話すような内容かもしれません。

 

ところが、趣味を尋ねることで

「あなたに興味がありますよ」という

表現になる場合もあります。

 

つまり、初対面で、実際には

何が好きか分からない答えしか返ってこないのに、

趣味について尋ねるのは、

作法であり、会話をするための手順なのです。

 

尋ねる側は、興味があるという意思を示すために聞き、

答える側は、漠然とした好みを差し障りない範囲で言う。

 

相手の懐に深く立ち入らなくても

会話は成立するし

運がよければ、そこから話が弾むかもしれません。

 

趣味は何ですか?

そう尋ねられたとき。

それは一種の儀式であって、

礼儀作法です。

 

自分の趣味について語るのは、

もっと親しくなってからでも

遅くはありません。

 

選べる道を増やす、もう一つの見方を

★★★曽我部キキョウ★ほしよみ堂★★★

 

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