あぐり
挨拶をしない後輩に腹が立ったとき ――ペンタクル9逆位置が教える「自分の価値を相手に決めさせない」
「新入社員が、私にはまったく挨拶をしないんです。」
そんなご相談がありました。
朝、顔を合わせても何も言わない。
こちらから挨拶をしても、ほとんど反応がない。
ところが、上司が現れると態度が変わる。
にこやかに笑い、きちんと受け答えをする。
それを見ていると、どうしても腹が立つと言います。
「挨拶くらいのことで、わざわざ注意するのも大人気ない気がする。でも、とても不愉快なんです。」
そして最後に、
「人間として愚弄されているような気分になります。」
と話されました。
この相談に対してタロットを引いたところ、出たのは、
ペンタクル9・逆位置。
私はこのカードを見て、
「相手の無礼と、自分自身の価値を結びつけないこと」
というテーマを感じました。
ペンタクル9は「自分の価値を、自分で知っている」カード
ペンタクル9の正位置には、美しい庭園の中に一人で立つ女性が描かれています。
豊かに実った葡萄。
整えられた庭。
その中で彼女は、静かに佇んでいます。
このカードが表すのは、
自立。
成熟。
品位。
自尊心。
そして、
自分がこれまで積み上げてきたものへの誇り
です。
誰かに褒めてもらわなければ、自分の価値が分からないわけではありません。
自分がどれだけ努力してきたのか。
何を身につけてきたのか。
どんな仕事をしてきたのか。
自分自身が、それを知っている。
だからこそ、人からの評価に必要以上に振り回されない。
それが、ペンタクル9の持つ落ち着いた強さです。
しかし今回は、そのカードが逆位置で出ました。
ここには、
外側の人の態度によって、自分の価値まで揺らいでしまう
という状態が表れているように思います。
「挨拶をされなかった」が「私は軽く扱われた」に変わる
もちろん、挨拶をしない人がいれば不愉快になるでしょう。
しかも、誰に対しても無愛想なのではなく、
上司にはニコニコする。
自分には挨拶もしない。
となれば、
「人を見て態度を変えているのではないか」
と思うのも自然です。
実際、その可能性もあるでしょう。
ただ、ここで少しだけ分けて考えてみたいことがあります。
起きている事実は、
「相手が挨拶をしなかった」
ということです。
ところが心の中では、そこから、
「私は軽く見られている」
「先輩として認められていない」
「馬鹿にされている」
そして、
「人間として愚弄された」
というところまで進んでいくことがあります。
相手の一つの態度が、自分自身の価値への判定にまで変わってしまう。
ペンタクル9逆位置は、まさにその部分を映しているのではないでしょうか。
相手の態度は、その人自身を表している
挨拶をする。
人に何かしてもらったらお礼を言う。
立場に関係なく、人として丁寧に接する。
こうしたことを大切にしている人ほど、そうしない人を見ると強い違和感を覚えます。
まして、
上司には愛想よくするのに、自分より立場が低い、あるいは得にならないと思った相手には態度を変える。
そんな振る舞いが見えれば、
「人を損得で見ているのではないか」
と感じることもあるでしょう。
ペンタクルは、現実的な価値、利益、立場などとも関係するスートです。
そのため、この新人側についてカードを読むなら、
人との関係を、敬意よりも「自分にとって得になるかどうか」で判断している未成熟さ
として表れている可能性もあります。
けれど、それはその人自身の問題です。
その人がどんな人間関係を築き、周囲からどのように信頼されていくのか。
それは、その人自身がこれから引き受けていくことです。
こちらまで、その世界へ入る必要はありません。
「失礼な人に腹が立つ」と「自分の価値を下げられる」は別
ここで大切なのは、
腹を立ててはいけない、ということではありません。
無視されれば不愉快です。
感じが悪い人だと思うこともあるでしょう。
それを無理に、
「気にしないようにしよう」
「私が大人にならなければ」
と押し込める必要もありません。
ただし、
相手の無礼さによって、自分の尊厳まで傷つけられたと思う必要もない。
ここは分けることができます。
相手が挨拶を返さなかった。
それは相手の振る舞い。
自分は普通に挨拶した。
それは自分の振る舞い。
相手がどのような人間であるかは、自分には決められません。
けれど、
自分がどのような人間でいるかは、自分で選べます。
これが、ペンタクル9の世界です。
品位とは、相手によって変えないこと
では、具体的にどう接すればよいのでしょうか。
私は、
こちらからは普通に挨拶する。
それで十分だと思います。
相手が返すかどうかは、相手に任せる。
機嫌を取る必要もありません。
何度も愛想よく話しかけて、こちらを認めさせる必要もありません。
かといって、
「挨拶しないなら、こちらもしない」
と同じ土俵へ降りる必要もありません。
仕事上必要なことは淡々と伝える。
必要な協力はする。
そして、もし挨拶だけではなく、報告・連絡・相談まで滞り、仕事そのものに支障が出るようになったなら、
その時は、
「礼儀の問題」ではなく「業務上のコミュニケーションの問題」
として扱えばよいでしょう。
ペンタクル9が表す品位とは、
誰にでも優しくすることではありません。
相手によって、自分のあり方まで変えないこと
なのだと思います。
誰かの態度に、自分の尊厳の値段を決めさせない
相談者が長い間仕事をしてきたなら、
そこには積み重ねてきた経験があります。
身につけてきた技術があります。
失敗から学んだことがあります。
人との付き合いの中で育ててきた礼儀や感覚があります。
それは、新入社員が挨拶をしたから生まれたものではありません。
そして、
挨拶をされなかったから失われるものでもありません。
ペンタクル9の女性が立っている庭は、
誰かに認めてもらうために、一日で作った庭ではありません。
長い時間をかけて、自分自身で育ててきた場所です。
だからこそ今回の逆位置は、
「他人の態度によって、自分の庭の価値まで疑わないでください」
と伝えているように思います。
失礼な人はいます。
人によって態度を変える人もいます。
こちらを軽く見る人に出会うこともあるでしょう。
けれど、そのたびに、
「私は軽く扱われる人間なのだろうか」
と自分まで疑っていたら、
自分の価値を決める権利を、いつの間にか相手へ渡すことになります。
必要なのは、相手を教育することでも、
無理に許すことでもありません。
ただ、
「あなたがどう振る舞うかは、あなたの問題。
私は、私の品位を守る。」
と静かに線を引くこと。
ペンタクル9逆位置が今回伝えているのは、そんなことなのではないでしょうか。
礼儀のない人に、自分の尊厳の値段を決めさせない。
それが、このカードからの一番大切なメッセージだと思います。






