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あぐり

不機嫌な上司に振り回されないために 相手の態度ではなく、自分の内側に戻るということ

機嫌の悪い上司に振り回されてしまう、というご相談をいただきました。

上司の機嫌が悪いと、声をかけても返事をしてもらえない。
書類をどさっと乱暴に置かれる。
言葉づかいや態度が、明らかに雑になる。

そんな態度を取られるたびに、心がざわついてしまう。
「私が何か悪いことをしたのだろうか」
「また怒らせてしまったのだろうか」
「どうしてこんな扱いを受けなければならないのだろう」

頭ではわかっているのです。

上司が不機嫌なのは、上司自身の問題である。
こちらがその機嫌を背負う必要はない。
相手の態度に、自分の価値まで左右されなくていい。

けれど、理屈ではわかっていても、心は簡単にはついてきません。

冷たくされた瞬間、胸の奥がぎゅっと縮む。
乱暴な態度を取られると、身体がこわばる。
何気ない一言が刺さって、その日一日気分が沈んでしまう。

これは決して、あなたが弱いからではありません。

人は、誰かから雑に扱われたとき、心と身体が反応するものです。
特に職場の上司のように、評価や立場に関わる相手であれば、なおさら影響を受けやすくなります。

だからまず大切なのは、
「こんなことで傷ついてはいけない」
「気にしないようにしなければ」
と、自分の感情を押さえ込まないことです。

むしろ、その不快感は大切なサインです。

心が波立つということは、そこに何か、自分にとって大切なものが触れられているということです。

たとえば、上司の不機嫌な態度に強く反応するとき、その奥には、
「私は不当に扱われている」
という感覚があるかもしれません。

あるいは、
「私は軽んじられている」
「ちゃんと尊重されていない」
「頑張っているのに認められていない」
「また理不尽なことに耐えなければならない」
という思いが隠れているかもしれません。

表面に出てくる感情は、怒りかもしれません。
悲しみかもしれません。
恐怖かもしれません。
あるいは、悔しさやみじめさかもしれません。

けれど、その感情をすぐに上司へ向けてしまうと、私たちは相手の機嫌の中に巻き込まれてしまいます。

「あの人が悪い」
「あの人さえ機嫌よくしてくれれば」
「あの人が変わってくれれば」

もちろん、雑な態度を取る上司に問題があるのは確かです。
不機嫌を周囲にまき散らすことは、成熟した大人の態度ではありません。
まして、立場のある人が部下に対して威圧的な態度を取るなら、それは職場環境の問題でもあります。

ただ、ここで大事なのは、相手の問題と自分の内側の反応を分けて見ることです。

上司の態度は、上司の課題。
それによって自分の中に湧き上がる感情は、自分が見つめることのできる領域です。

これは、相手を許しましょうという意味ではありません。
我慢しましょうという意味でもありません。
自分を責めましょうという意味でもありません。

むしろ、自分の心を相手の不機嫌から取り戻すということです。

上司が乱暴に書類を置いた。
返事をしてくれなかった。
冷たい態度を取った。

その瞬間に、心の中でこう問いかけてみてください。

「私は今、何を感じているのだろう」
「怒っているのか、悲しいのか、怖いのか」
「この感情の奥には、どんな思いがあるのだろう」
「私は本当は、どう扱われたかったのだろう」

すると、単なる怒りの下に、
「丁寧に扱われたかった」
「普通に返事をしてほしかった」
「人として尊重されたかった」
という、とても自然な願いが見えてくることがあります。

この願いに気づくことが、とても大切です。

なぜなら、私たちは自分の願いに気づかないまま相手の態度だけを見ていると、いつまでも相手に心を握られてしまうからです。

上司が機嫌よくしてくれた日は安心する。
上司が不機嫌な日は落ち込む。
上司の顔色によって、自分の一日が決まってしまう。

それはとても苦しいことです。

けれど、自分の感情を見つめられるようになると、少しずつこう思えるようになります。

「ああ、私は今、雑に扱われたように感じて傷ついたのだな」
「私は本当は、きちんと尊重されたかったのだな」
「でも、上司の態度が私の価値を決めるわけではない」
「私は私の尊厳を、自分の側に取り戻していい」

ここまで来ると、相手の機嫌に飲み込まれるのではなく、自分の中心に戻ることができます。

そして、現実的な対応も大切です。

上司が不機嫌なときは、必要以上に感情的なやり取りをしようとせず、業務上必要なことだけを簡潔に確認する。
返事がもらえない場合は、口頭だけでなくメールやチャットなど、記録に残る形で確認する。
乱暴な態度が続く場合は、日時や内容をメモしておく。
あまりにも精神的な負担が大きい場合は、信頼できる人や人事、相談窓口に話す。

自分の心を整えることと、現実的に身を守ることは、どちらも必要です。

精神論だけで耐えようとしなくていいのです。
「気にしないようにしよう」と自分に言い聞かせるだけでは、心の奥に傷が溜まっていくことがあります。

だからこそ、内側では感情を見つめ、外側では必要な境界線を引く。

この二つを同時に行うことが大切です。

上司の不機嫌は、あなたの責任ではありません。
相手の態度の悪さを、あなたが背負う必要はありません。

けれど、その出来事によって自分の中に湧き上がった感情は、あなた自身を知るための大切な入口になります。

「私は何に傷ついたのか」
「私は何を大切にしているのか」
「私は本当は、どんな関係性を望んでいるのか」
「私はどこまでなら受け入れられて、どこからは境界線を引くべきなのか」

不快な感情は、ただの邪魔者ではありません。
それは、自分の尊厳がどこにあるのかを教えてくれる、静かな警告音でもあります。

相手の機嫌を取ることを、自分の仕事にしなくていい。
相手の態度によって、自分の価値を測らなくていい。

上司が不機嫌な日も、あなたの価値は下がりません。
雑に扱われたからといって、あなたが雑に扱われていい人間になるわけではありません。

大切なのは、相手の荒れた感情の海に一緒に飛び込まないことです。

心の中で一歩下がり、静かに自分へ戻る。
「私は今、傷ついた」
「私は今、腹が立った」
「私は今、怖かった」
そう認めるところから、振り回されない自分が育っていきます。

感情をなかったことにするのではなく、感情に飲み込まれるのでもなく、感情を手がかりにして自分の中心へ戻る。

それが、不機嫌な上司に振り回されないための第一歩です。

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