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曽我部 キキョウ

未来は外れても、物語は古びない ~世界の作り方から見える、もう一つの話

昔のSFを読むと、

不思議な気分になりませんか。

 

アーサー・C・クラークの小説、

『2001年宇宙の旅』を見ると。

月面に人類が定住している他、

意思を持つ人工知能が出てきます。

 

実際の2001年に何があったかというと

アメリカ同時多発テロに小泉内閣発足。

月面に人類はおらず、

人工知能もまだまだ、といった状態でした。

 

小説は未来の話として描いてはいますが、

私たちはそれが

現実にならなかったことを知っています。

 

もう少し身近な作品でしたら

鉄腕アトムの誕生日は2003年4月7日。

とっくに過ぎていますが、

アトムは漫画やアニメの中にしかいません。

 

SF作品の場合、未来を描いていると、

その未来がいかにも実現可能だから

名作だと思われがちです。

 

けれども、「名作」を読んでも、

実現したことなど、かなり少ないのです。

 

それでも名作として、

今でも読まれます。

 

なぜでしょう。

 

それは、未来を描いているようで、

実は作者の「世界の見方」を

描いているからなのです。

 

登場人物の考え方だけではありません。

世界そのものが、

作者の世界観を反映しています。

 

例えば、先ほどの『2001年宇宙の旅』では

人工知能のHALが人間に対して

「反乱」を起こします。

 

このような、「設定」の中に

作者の世界を見る目が出ているのです。

 

なぜ、超能力者は孤独なのか。

なぜ、不老不死が幸せとして書かれないのか。

なぜ、アンドロイドと人間の共存が難しいのか。

 

古典的なSF作品が

未来のことを描いているはずなのに、

その年代を通り過ぎ、

起きなかった過去の話になってしまっても

引き続き読まれる理由は、

この世界観ではないでしょうか。

 

作者の哲学的考察や、世界に対する思いは、

世界設定の中に、にじみ出ているのです。

 

力を持つと、人はどうなるのか。

死や老いがなくなると人は変わるのか。

人間的な機械を、人は許容するのか。

 

小説は、登場人物を追うだけでも

十分楽しく読めます。

 

けれどもそこから一歩引いて、

世界全体を眺めてみてください。

 

物語は、作者の空想の産物のようでいて、

現実がどうなっていくかの危惧や希望であり

かつ人間の可能性を探るものなのです。

 

ですから、古いSF作品に限らず

小説を読むときに

「どのような見方があるのだろう」と

考えてみるのも、楽しみ方の一つではないでしょうか。

 

 

※過去の記事はこちらでご覧いただけます。

 

選べる道を増やす、もう一つの見方を
曽我部キキョウ

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