ブログ

迦具華リオサ

「おかえり」がなかった。―不妊治療から復帰した看護師が、職場で認められるまでの1年

「おかえり」と言ってもらえると思っていた。
でも、病棟に戻った彼女を待っていたのは、以前とは違う空気だった。
不妊治療より苦しかったのは、復帰してからの一年間だったのかもしれない。

彼女は30代の看護師だった。

夜勤もこなし、急変にも対応し、後輩のフォローもする。
周囲から頼られる存在だった。

結婚後、子どもを望むようになったが、なかなか授からなかった。

不妊治療が始まると、通院と勤務の両立に苦しむようになった。

「次はこの日に来てください」

医師に言われるたび、真っ先に思い浮かぶのは勤務表だった。

「この日は日勤や」
「また誰かに代わってもらわなあかん」

治療が進むにつれ、急な通院も増えた。

ある日、勤務変更をお願いしたとき、

「また?」

そう言われた。

たった二文字だった。

でも、その言葉が胸に残った。

自分が休むことで誰かに負担をかけている。
迷惑をかけている。

そう思うほど、治療そのものより職場へ申し訳なく感じるようになった。

そして彼女は、一度病棟を離れることを決めた。

数か月後。

治療を経て、再び職場へ戻った。

久しぶりにナース服に袖を通し、名札をつけた。

緊張していた。

それでも心のどこかで、

「戻ってきてくれてよかった」

そう言ってもらえると思っていた。

ところが、現実は違った。

戻ってきても、元の場所には戻れなかった

「今日からまたお願いします」

ナースステーションで頭を下げる。

何人かは声をかけてくれた。

でも以前のような雰囲気ではなかった。

休憩室の会話に入りづらい。

仕事を任されるときにも、

「これ、できる?」

と確認される。

数か月前まで普通にやっていた仕事だった。

彼女は、

「休んでたから仕方ない」

と自分に言い聞かせた。

それでも心の中では、

「私はもう戦力として見てもらえてへんのかな」

そんな寂しさがあった。

だから、黙って働いた。

ナースコールが鳴れば行く。

忙しいスタッフがいれば手伝う。

患者さんの小さな変化を見逃さない。

以前なら当たり前にやっていたことを、一つずつ積み上げ直した。

患者さんの一言に救われた

復帰から半年ほど経ったころ。

不安が強く、何度もナースコールを押す患者さんを担当した。

周囲が少し困ったような顔をしても、彼女は何度もベッドサイドへ向かった。

ある日、その患者さんが退院するとき、彼女の手を握って言った。

「あなたがおってくれて、よかったわ」

その瞬間、彼女は思い出した。

同僚に認めてもらうために看護師になったんじゃない。

目の前の人を支えたくて、この仕事を選んだのだ。

「やっぱり、いてくれたら助かる」

復帰から約一年。

忙しい日勤中、患者さんが急変した。

彼女はいち早く異変に気づき、医師へ報告し、必要な対応を進めた。

処置が終わったあと。

これまで少し距離を感じていた先輩看護師が言った。

「やっぱり、いてくれたら助かるわ」

たった一言だった。

でも彼女にとっては、この一年を全部認めてもらえたような言葉だった。

帰り道、少しだけ泣いた。

本当の職場復帰とは

復職とは、勤務表に名前が戻ることだけではない。

一度離れた場所で、人間関係を作り直し、信頼を積み重ね、

「ここにいていい」

と自分でも思えるようになることなのだと思う。

不妊治療だけではない。

出産、病気、介護、家庭の事情。

誰にでも、仕事を離れなければならない時期はある。

だから復帰してきた人を、

「休んでいた人」

として見るのか。

「また一緒に働く仲間」

として迎えるのか。

その違いはとても大きい。

彼女にとって本当の意味での職場復帰は、復帰初日ではなかった。

一年後、

「いてくれたら助かる」

そう言ってもらえた日だったのかもしれない。

 

占いのことならほしよみ堂大阪梅田店 大阪駅前第3ビル地下2階

 

迦具華リオサ

 

迦具華リオサ出演日

 

対面鑑定のご予約はこちらをタップ

 

迦具華リオサ占いコラム

  • 「ほしよみ堂」youtubeチャンネル
  • 占い師募集

占いのことなら|ほしよみ堂 > ブログ > 「おかえり」がなかった。―不妊治療から復帰した看護師が、職場で認められるまでの1年