美月マーシャ
「また行ける」と思っていた、サンクトペテルブルクの夏
ロシアと聞くと、
まず極寒の冬を思い浮かべる方が多いでしょう。
でも、実際に暮らしてみると、
春夏秋の季節の移り変わりも
短いながらに、しっかり感じられました。
花が咲き、
空が明るくなり、
噴水が動き出す。
その景色には、
「今」を味わう力のようなものがありました。
赴任して1年目の夏。
私たち家族は、
モスクワからサプサンという高速列車に乗って、
サンクトペテルブルクへ向かいました。
片道4時間弱。
当時、子どもはまだ2歳前。
今振り返ると、
なかなか思い切った旅です。
赴任してまだ2か月も経っていない頃。
生活にもまだ慣れていないし、
正直、少し腰も重かった。
でも、せっかくロシアにいるのだから。
行けるときに行っておこう。
そんな勢いだったと思います。
その年は、
サッカーのワールドカップがロシアで開催され、
街全体が華やいでいました。
世界各地から観光客が集まり、
メインストリートは人でいっぱい。
サンクトペテルブルクの街は、
モスクワよりも少しコンパクトで、
歩きやすい印象がありました。
ただ、事前に「スリには注意」と聞いていたので、
街並みを歩きながらも、
バッグだけはしっかり握っていました。
エルミタージュ美術館では、
かつて冬の宮殿だった建物の中に、
息をのむような美術品が並んでいました。
絵画を見に行ったはずなのに、
気づけば建物そのものに圧倒されている。
空間そのものが芸術のような場所でした。
ロシアバレエの聖地、
マリンスキー劇場では、
小さな子ども連れでバレエも鑑賞できました。
途中でぐずらないかな。
静かにしていられるかな。
そんなことを気にしながらも、
本場の劇場の空気に触れられた嬉しさを
今でもよく覚えています。
郊外では、
エカテリーナ宮殿にも行きました。
淡いブルーの外観。
繊細に輝く琥珀の間。
煌びやかで
どこか夢の世界にいるような心地でした。
そして、特に印象に残っているのが、
ペテルゴフ・夏の宮殿です。
フィンランド湾に面した広い庭園。
宮殿の前に広がる噴水。
夏の間だけ見られる、
庭園と噴水が織りなすアート。
水しぶきが光の中で
きらきら輝く光景は
忘れることができません。
今振り返ると、
2歳前の子どもを連れて、
よくここまで回ったなと思います。
当時は大変だったはずなのに、
残っているのは不思議と、
疲労感よりも夏の光の記憶です。
そして、何より思うのは、
あのとき行っておいてよかったということ。
私はどこかで、
3年もロシアにいるのだから、
サンクトペテルブルクには
また行く機会があるだろうと思っていました。
生活が落ち着いたら。
子どもがもう少し大きくなったら。
また時間ができたら。
そう考えていました。
でも、その後はコロナの流行もあり、
思うように動けない時期が続きました。
結局、
サンクトペテルブルクへ行けたのは、
その一度だけ。
「また今度」は、
意外と簡単には来ないものです。
旅は、
完璧なタイミングを待ってから
行くものではないのかもしれません。
行けるときに行く。
見られる季節に見る。
受け取れる景色を、
そのとき受け取っておく。
サンクトペテルブルクの夏は、
そんなことを教えてくれた旅でした。
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原宿ほしよみ堂所属占い師
美月マーシャ
平凡な日常に、スパイスを。
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