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あぐり

断られるとわかっている上司に相談してしまう癖を直すには?

「相談しても、どうせ対応してもらえない」

そう心のどこかでわかっている上司に、また相談してしまう。
あるいは、相手が受け入れるのは難しいと薄々わかっているスケジュールを、パートナーに提案してしまう。

そして案の定、受け入れられない。

そのたびに、

「やっぱりわかってもらえなかった」
「やっぱり私は大切にされていない」
「やっぱり相手は変わらない」

そう感じて、深く傷ついてしまう。

けれど、ある時ふと気づくのです。

もしかしたら私は、最初から断られるような状況を、自分で設定していたのではないか。
受け入れられない相手を選び、通らない条件を出し、最後に「やっぱり無理だった」と確認するような流れを、無意識につくっていたのではないか。

これは、とても苦しい気づきです。

相手に傷つけられていると思っていたのに、実は自分自身もまた、その傷つく舞台をどこかで用意していたかもしれない。
そう気づいた時、人は自分を責めたくなります。

けれど、ここで大切なのは、自分を責めることではありません。
この深層心理の仕組みを、静かに理解することです。

今回のご相談に対して易を立てたところ、出た卦は、天山遯(てんざんとん)二爻でした。

天山遯は、上に天、下に山の卦です。

天は高く遠く広がり、山は地上にどっしりと留まっています。
そこには、届きそうで届かない距離があります。

この卦の「遯」とは、逃げるという意味に見えますが、単なる逃避ではありません。
むしろ、退くべき時に退く智慧です。

押しても動かないものを、さらに押し続けない。
届かない相手に、無理にわからせようとしない。
通らない場所へ、何度も願いを差し出さない。

状況をよく見て、いったん身を引く。
それが天山遯の教えです。

そして二爻には、こうした意味があります。

「黄牛の革を用いてこれを執る。勝げて説く莫し」

黄牛の革でしっかりと縛る。
ほどこうとしても、なかなかほどけない。

これは今回の相談においては、外側の相手に縛られているというよりも、自分の内側にある古い思考パターンに、強く縛られている状態として読むことができます。

たとえば、

「どうせ私は受け入れられない」
「どうせ相談しても無駄」
「どうせ相手はわかってくれない」
「でも私はちゃんと努力した」
「提案したのに、相手が受け入れなかった」

こうした流れが、ひとつの物語になっているのです。

もちろん、表面の意識では、本当に何とかしたいと思っています。
上司に対応してほしい。
パートナーに予定を受け入れてほしい。
自分の願いを大切に扱ってほしい。

けれど深層心理では、断られることによって、ある古い思い込みを確認している場合があります。

「やっぱり私は大切にされない」
「やっぱり私の願いは通らない」
「やっぱり頑張っても無駄」

この“やっぱり”を証明するために、無意識が不成立になる状況を選んでしまうことがあるのです。

これは怠けではありません。
悪意でもありません。
心の防衛です。

本当に通る可能性のある相談先を選ぶ。
本当に実現できるスケジュールを組む。
相手が応じやすい形で提案する。
そのように現実的な行動を取ると、今度は自分も責任を持たなければなりません。

「私は本当にこれを実現したいのか」
「断られた時、次にどう動くのか」
「相手を責めるのではなく、自分の望みを現実にするために何を選ぶのか」

そこに向き合う必要が出てきます。

だから人は時に、最初から通らない道を選ぶことがあります。
通らなければ、傷つきはするけれど、変わらなくて済むからです。

天山遯二爻は、ここに静かに光を当てています。

この卦は、こう告げています。

もう、その不成立の舞台から退きなさい。

対応してくれない上司に、何度も同じ形で相談する必要はありません。
その上司に「わかってもらうこと」を、唯一のゴールにしなくてよいのです。

必要なら、相談内容を記録する。
日時、内容、返答、未対応の事実を書き残す。
別の担当者、人事、信頼できる第三者など、現実に動く可能性のある窓口を探す。
あるいは、感情だけで訴えるのではなく、「この件について、A案・B案・C案のどれで進めるのがよいでしょうか」と、相手が判断しやすい形に整える。

これは媚びることではありません。
現実を動かすための技術です。

パートナーへの提案も同じです。

最初から無理な日程を出して、受け入れられなかった時に傷つくのではなく、まず自分の本当の願いを明確にすることです。

「私は本当は、あなたとこういう時間を持ちたい」
「でも現実的には、この日程は難しいかもしれない」
「だから、A案・B案・C案の中で、どれなら可能か一緒に考えたい」

このように、願いを現実に届く形へ整えていく。

ここで大切なのは、相手にすべてを委ねないことです。
そして、自分の願いを、わざわざ拒絶される形で差し出さないことです。

自分の願いは、雑に扱われるためにあるのではありません。
断られて、「やっぱり私はダメだ」と確認するためにあるのでもありません。

願いとは、本来、自分の命が未来へ向かって伸びようとする力です。

だからこそ、願いには、届け方が必要です。
相手が受け取りやすい形。
現実が動きやすい形。
自分自身が責任を持てる形。

そこまで整えて差し出すことが、本当の意味で「願う」ということなのです。

天山遯二爻の「革で縛られる」という象意は、古い心の癖がそう簡単にはほどけないことも示しています。

一度気づいたからといって、すぐに変わるわけではありません。
また同じような相手を選んでしまうこともあるでしょう。
また無理な条件を出してしまうこともあるでしょう。

けれど、そのたびに気づけばいいのです。

「あ、私は今、また断られる舞台を作ろうとしている」
「私は本当に解決したいのか、それとも“やっぱり無理だった”と確認したいのか」
「この提案は、現実に通すための提案か。傷つくための提案か」

この問いを持つだけで、革紐は少しずつゆるんでいきます。

そして、最後にこう自分に言ってあげてください。

私は、断られるために願っているのではない。
私は、現実にするために願ってよい。

この言葉は、天山遯二爻の処方箋です。

無理な相手にしがみつかない。
通らない条件に固執しない。
受け入れられないことで、自分の価値を測らない。

いったん退く。
静かに整える。
そして、現実に届く形で、もう一度願いを出し直す。

天山遯は、敗北の卦ではありません。
退くことで、自分を守る卦です。

二爻は、縛られている自分に気づき、その縛りを一気に断ち切るのではなく、少しずつほどいていく段階を示しています。

相手を責めるだけでもなく、
自分を責めるだけでもなく、
無意識に作っていた不成立の舞台から、静かに降りること。

そこから、人生は少しずつ変わり始めます。

願いは、拒絶されるためにあるのではありません。
自分の命を、現実の中で花開かせるためにあるのです。

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