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迦具華リオサ

「そんなに上を目指して、何になるの?」昇進したい看護師が、同僚のひと言で立ち止まった日

「主任を目指そうと思ってる」と話した瞬間、休憩室の空気が少し変わった。
「えっ、私は今のままで十分。そんなに頑張って、何になるん?」
笑って返したけれど、その言葉は夜勤が終わっても、ずっと胸に残っていた。

同じ病棟で働き始めた同期だった。

新人のころは、二人とも同じように先輩に怒られ、採血がうまくできれば喜び、夜勤を無事に終えれば「今日も生き延びたな」と笑っていた。

ところが、数年がたつと少しずつ考え方が変わってきた。

私は、もっと看護を勉強したくなった。

新人教育にも関わりたい。

病棟全体を見られる立場にもなってみたい。

そして、いつか主任になれたらと思うようになった。

一方、同期は違った。

「私は管理職とか絶対イヤやわ」

「患者さんと話してるほうが好き」

「休みの日まで仕事のこと考えたくないし」

彼女はそう笑った。

どちらかが間違っているわけではない。

頭ではわかっている。

それなのに私は、少しだけモヤモヤしていた。

「昇進したい」と言うのは、そんなに悪いこと?

看護師の世界では、「もっと勉強したい」は言いやすくても、「昇進したい」は少し言いづらいことがあります。

「出世したいんや」

「意識高いなあ」

「師長に気に入られたいん?」

冗談半分の言葉でも、意外と心に残ります。

でも、昇進したい理由は人それぞれです。

給料を上げたい人もいるでしょう。

後輩を育てたい人もいる。

病棟の仕組みを変えたい人もいる。

自分がどこまでできるのか試してみたい人もいます。

「もっと上を目指したい」

それは決して恥ずかしい気持ちではありません。

むしろ、自分の人生や仕事について真剣に考え始めた証拠なのかもしれません。

「今のままでいい」も、逃げではない

ある日の夜勤明け。

同期と二人で駅まで歩いていると、彼女がぽつりと言いました。

「私な、昔は主任とか目指したほうがええんかなって思っててん」

意外でした。

ずっと現状維持を望んでいる人だと思っていたからです。

「でも、お母さんの介護もあるし、休みの日は自分の時間も欲しい。私は仕事だけが人生になったらしんどいねん」

その言葉を聞いて、私は初めて気づきました。

彼女は向上心がないわけではなかった。

自分が大切にしたいものを、ちゃんと知っていただけだったのです。

管理職になると、スタッフの教育や勤務調整、会議、クレーム対応など責任も増えていきます。

患者さんのそばで看護を続けたい人もいる。

家庭を大切にしたい人もいる。

趣味や副業を楽しみたい人だっています。

「今のままで働きたい」

それも立派なキャリアの選択です。

同じ看護師でも、見たい景色は違う

その日から私は、同期と自分を比べることを少しやめました。

私が主任を目指しているからといって、彼女より偉いわけではない。

彼女が現状維持を選んだからといって、成長していないわけでもない。

役職がなくても、新人から絶大な信頼を得ている看護師はいます。

「あの人が夜勤にいると安心する」

そう言われる看護師だっています。

反対に、管理職になって初めて力を発揮する人もいます。

スタッフの長所を見つけるのが得意な人。

病棟の空気を変えられる人。

問題が起きたときに調整できる人。

看護師の価値は、肩書き一つでは決まりません。

苦しくなるのは「違い」ではなく、押しつけ

問題になるのは、お互いの考え方が違うことではありません。

「昇進しないなんて向上心がない」

「そんなに出世して何になるの?」

そうやって、自分の価値観を相手に押しつけ始めたときです。

山の頂上まで登って景色を見たい人もいる。

途中の高原でゆっくり景色を楽しみたい人もいる。

そもそも別の山へ行きたい人だっています。

どれが正解ということではありません。

ただ、行きたい場所が違うのです。

本当に聞くべきなのは「私はどうしたい?」

同期が主任になった。

後輩が先に昇進した。

同年代の看護師が資格を取った。

そんな話を聞くと、焦ることがあります。

でも、そのとき一度考えてみてほしいのです。

私は、本当に何を望んでいるのだろう。

管理職になりたいのか。

専門性を極めたいのか。

給料を上げたいのか。

患者さんのそばで働き続けたいのか。

夜勤を減らしたいのか。

家族との時間を増やしたいのか。

自分の本音がわからないまま周囲を見ていると、誰かが昇進すれば焦り、誰かが楽そうに働いていれば羨ましくなります。

人と比べるほど、自分の道が見えなくなることもあるのです。

占いで仕事運を見るときも同じ

占いでも、

「私は管理職になれますか?」

「今の職場で昇進できますか?」

という相談があります。

もちろん、仕事運や転機を見ることはできます。

でも私は、もう一つ大切なことがあると思っています。

「昇進できるか」より、「昇進した先に、自分が望んでいる人生があるか」。

役職につくことで輝く人もいます。

現場のスペシャリストとして輝く人もいます。

訪問看護や美容看護へ進む人もいる。

教育の道へ行く人もいる。

まったく違う仕事に挑戦する人もいるでしょう。

看護師のキャリアは、一本の階段ではありません。

数年後、同期とまた休憩室で

「主任の話、正式に来たわ」

私がそう言うと、同期は笑いました。

「よかったやん。向いてると思うで」

そして彼女も言いました。

「私はやっぱり、このまま現場におるわ。患者さんとしゃべってるの好きやし」

以前なら、その言葉に少し引っかかっていたかもしれません。

でも、その日は違いました。

「それが一番ええんちゃう?」

自然にそう言えました。

私には私の道がある。

彼女には彼女の道がある。

同じ病院で、同じ制服を着て、同じ「看護師」という仕事をしていても、目指す人生まで同じでなくていい。

上を目指すことも、今いる場所を大切にすることも、どちらも前向きな選択です。

大切なのは、周囲がどう働いているかではありません。

数年後に振り返ったとき、

「私はこれを選んでよかった」

そう思える働き方を、自分で選べているかどうかなのだと思います。

 

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