愛藍姫 トリコ
落語と占い―トリ物語・落語編①―
落語と占い――トリ物語・落語編①―
「心眼」――
本当に大切なものは、目に見えるのだろうか
私、落語や講談など演芸が好きです。
「好き」というだけではなく、
以前、落語を習っていたことがあります。
柳亭こみち師匠をはじめ、
噺家さんから直接ご指導いただき、
着物を着て高座に上がり、
発表会で落語を披露したことも
何度かありました。
また、当時二ツ目でいらした
春風亭柳枝師匠の落語会や、
神田伯山先生との二人会を
何度かさせていただいた時期もあります。
今、
占い師をしている私しか知らない方には、
少し意外かもしれません。
でも振り返ってみると、
落語は私の人生の中で、
ただの趣味ではありませんでした。
当時、長く体調を崩していた私にとって、
落語は、もう一度人生に戻っていくための
小さなきっかけの一つだったのです。
そんな私が好きな演目の一つに、
「心眼」
があります。
私が「心眼」に惹かれる理由。
それは、
「本当に大切なものは、
目に見えるのだろうか?」
ということを、
子どもの頃からどこかで考えていたからです。
■見えるようになれば、幸せになれるのか
「心眼」の主人公・梅喜は、
目が見えません。
妻のお竹に支えられながら暮らしています。
やがて梅喜は、
あることをきっかけに目が見えるように
なります。
普通なら、
「よかったね」
で終わりそうなお話です。
ところが、
落語はそんなに単純ではありません。
今まで見えなかった世界が見える。
自分の姿も見える。
美しい人も見える。
すると、
それまで自分を支えてくれていたものの
価値まで、違って見えてくる。
「見えるようになる」という
願いが叶ったのに、
必ずしも幸せになるわけではない。
そこに、この噺の怖さと面白さがあります。
■失ってから、見えるものがある
私は長い間、体調を崩していました。
以前なら普通にできていたことが、
できなくなる。
仕事をすることも、
出かけることも、 誰かと会うことも。
当たり前だった日常が、
当たり前ではなくなりました。
その時間は、
決してきれいな言葉だけで語れるものでは
ありません。
けれど、
失ったからこそ見えるようになったものも
ありました。
人の優しさ。
誰かの声に救われること。
笑えること。
今日一日を無事に過ごせること。
そして、
「普通の一日」が、
実はとてもありがたいものだったこと。
落語を聴いて笑った時間も、
私にとってはその一つでした。
■人は「見えているもの」に惑わされる
今、私は占い師として、
たくさんの方のご相談を伺っています。
恋愛相談では、
「彼は私のことをどう思っていますか?」
「連絡は来ますか?」
「二人は付き合えますか?」
というご質問をいただきます。
もちろん、それを占うのが私の仕事です。
でも、お話を聞いていると、
その奥に別の問いが隠れていることが
あります。
「私は、
この人と一緒にいて幸せなのだろうか」
という問いです。
連絡が来た。
会えた。
付き合えた。
結婚できた。
それは、とても嬉しいことです。
けれど、願いが叶うことと、
その人が幸せになることは、
必ずしも同じではない場合があります。
これは少し、「心眼」に似ている気がします。
欲しかったものを手に入れた時、
人間は初めて別のものを見ることがあります。
■占いも「心の眼」で見るものなのかもしれない
占い師になった今、私は毎日のように
「目には見えないもの」と向き合っていると
感じます。
人の気持ち。
ご縁。
これからの可能性。
そして、ご相談者さま自身も
まだ言葉にできていない、本当の願い。
未来を当てることだけが、
占いではないと思っています。
目の前の願いのさらに奥に、
「私は本当は、どうなりたいのだろう」
という気持ちがある。
そこを一緒に見つけていくことも、
占い師の仕事なのではないかと
実感しています。
■十年以上の時を経て
長い時間が経ち、
私の体調も少しずつ良くなってきました。
そして今。
私は浅草という街で、
ほしよみ堂の占い師として
対面鑑定をさせていただいています。
落語や講談が好きだった私。
落語や講談に救われた私。
落語を習い、 着物を着て高座に上がった私。
そして長い時間を経て、
今度は占い師として、
人の人生のお話を聞いている私。
あの頃は、
こんな未来を想像していませんでした。
人生とは、本当に不思議です。
「心眼」という噺が好きだったことも、
今になって考えると、
どこか今の仕事につながっているような
気がします。
本当に大切なものは、
目に見えるものだけなのでしょうか。
そして、
今、自分が見ているものだけが、
人生のすべてなのでしょうか。
私は、そうではないと思っています。
人生の途中では、
先がまったく見えなくなることがあります。
私にも、そんなドン底で不安な時期
がありました。
でも、見えないからといって、
その先に何もないわけではありません。
十年以上の時を経て、
浅草にいる今の私から、
あの頃の私に一言伝えられるなら、
こう言いたいです。
「まだ見えていないだけだよ。」
あなたの人生には、
ちゃんと続きがあるからね。」と。
――トリ物語・落語編、つづく。
愛藍姫トリコ
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