ブログ

あぐり

パワハラ上司が処分されない会社に失望した時 ――乾為天初爻が教える「怒りを力に変える前の沈黙」

職場で、これまで部下にパワハラを行ってきた上司の不祥事が発覚しました。

勇気を出して告発した人がいる。
傷つきながらも、声を上げた人がいる。
それなのに、会社はその上司の処分を保留しました。

その状況を見て、
「それでは被害を受けた人が報われないのではないか」
「会社は、いったい何を守ろうとしているのか」
「こんな会社にいてよいのだろうか」
と、心が大きく揺れる。

自分自身が、その上司から深く傷つけられたわけではない。
けれど、どうしても腑に落ちない。
会社を辞めたい気持ちでいっぱいになる。

このようなご相談に対して易を立てたところ、出た卦は、
乾為天 初爻
でした。

乾為天は、六十四卦の中でももっとも陽の力が強い卦です。

天。
意志。
正義。
誇り。
まっすぐに上へ昇ろうとする力。

けれど、今回出たのは初爻です。

初爻には、
「潜龍、用うるなかれ」
という言葉があります。

龍は、まだ深い淵に潜んでいる。
その力は本物だけれど、いまはまだ表へ出て大きく動く時ではない。

そういう意味です。

この卦は、相談者の怒りや違和感を否定していません。

むしろ、
「その違和感は、あなたの中にある正義感が目を覚ました証です」
と告げているように感じます。

人が傷つけられた。
勇気を出して声を上げた。
それなのに、会社の対応が曖昧に見える。

そこに対して、
「おかしい」
「納得できない」
「このままでいいはずがない」
と感じるのは、とても自然なことです。

その感覚は、決して間違っていません。

ただし、乾為天の初爻は、ここでただちに辞めなさい、戦いなさい、会社を断罪しなさい、とは言っていません。

むしろ、こう告げています。

いまは、怒りの勢いだけで動く時ではない。
まずは、自分の力を内側に蓄えなさい。
状況を見極めなさい。
自分の立ち位置を整えなさい。

辞めたいという気持ちは、本音です。
そして、その本音を無視する必要はありません。

ただ、辞めたい気持ちが強い時ほど、すぐに辞表を出す前に、自分に問いかけてみることが大切です。

私は、何に一番傷ついているのか。
会社の対応の何が許せないのか。
この職場に残ることで、自分の心は壊れてしまうのか。
それとも、もう少し会社の判断を見届ける余地があるのか。
辞めるとしたら、それは怒りからなのか、尊厳を守るためなのか。

ここを整理しないまま動いてしまうと、後から心にしこりが残ることがあります。

乾為天初爻の「潜龍」とは、力がない状態ではありません。

むしろ、力はある。
誇りもある。
正義感もある。
けれど、その力をいま乱暴に放てば、自分自身を傷つけてしまうかもしれない。

だからこそ、いまは静かに沈み、時を待つのです。

この場合、現実的にはまず、事実と感情を分けて整理することが大切です。

会社が処分を保留している理由は何なのか。
調査中なのか。
証拠確認中なのか。
それとも、加害者を守ろうとしているのか。
被害者への配慮や再発防止策はあるのか。

見えていない部分があるなら、すぐに結論を出すより、まずは確認できる範囲で確認することです。

また、自分が見聞きしたこと、自分が感じたこと、会社の対応などは、日付とともに記録しておくとよいでしょう。
感情が大きく揺れている時ほど、記録は自分を守る灯になります。

そして、被害を受けた人に対しては、代わりに怒りを背負いすぎないことも大切です。

もちろん、味方でいることは大切です。
「あなたが声を上げたことは、とても勇気あることだったと思います」
「何かできることがあれば言ってください」
そう静かに伝えるだけでも、その人にとっては大きな支えになることがあります。

けれど、相手の痛みを全部引き受けようとすると、今度は自分が倒れてしまいます。

正義感の強い人ほど、他人の苦しみを自分のことのように感じます。
けれど、乾為天初爻は、まず自分の中心に戻ることを求めています。

龍は、まだ淵にいる。

それは、逃げているのではありません。
力を失っているのでもありません。
軽率に飛び立たないだけです。

本当に飛ぶべき時に飛べるように、いまは深く息を整えているのです。

今回の相談で大切なのは、会社を辞めるか辞めないかを、すぐに決めることではありません。

まずは、
「この会社は人を大切にする場所なのか」
「自分はこの環境で誇りを持って働けるのか」
「ここにいることで、自分の心が濁っていかないか」
を静かに見極めることです。

もし会社が、最終的にきちんと調査を行い、被害者を守り、再発防止に向けて動くのであれば、もう少し様子を見る余地はあります。

しかし、会社が明らかに加害者を守り、被害者を軽んじ、何事もなかったかのように済ませようとするなら、その職場は、相談者の魂を曇らせる場所かもしれません。

その時の退職は、逃げではありません。
自分の尊厳を守るための撤退です。

易は、怒りを否定しません。
けれど、怒りに飲まれることも勧めません。

怒りは、正しく扱えば、自分の尊厳を守る力になります。
しかし、怒りのままに動けば、自分の足元を崩す火にもなります。

乾為天初爻は、こう告げています。

あなたの違和感は間違っていない。
けれど、いまは怒りのまま飛び立つ時ではない。
龍はまだ淵にいる。
静かに事実を見極め、自分の力を蓄えなさい。
そして、本当に動くべき時が来たら、誇りを持って進みなさい。

会社の不誠実さに心が揺れる時、
私たちはすぐに白黒をつけたくなります。

辞めるべきか。
残るべきか。
戦うべきか。
黙るべきか。

けれど、易はその前に、もっと深い問いを投げかけます。

あなたは、自分の尊厳をどのように守りますか。
あなたは、自分の正義感をどのように育てますか。
あなたは、怒りを破壊ではなく、人生を選び直す力に変えられますか。

乾為天初爻は、まだ始まりの卦です。

けれど、始まりだからこそ、ここでの姿勢が大切です。

いまは、深く潜る時。
軽率に動かず、しかし自分の感覚を眠らせない時。
怒りを胸の奥で静かに清め、やがて自分の道を選ぶ力へと変えていく時です。

龍は、まだ淵にいます。

けれど、その龍は、いつまでも眠っているわけではありません。
時が来れば、必ず天へ昇ります。

その時に後悔のない選択ができるように、
いまはまず、自分の心を守り、事実を見つめ、静かに力を蓄えてください。

  • 「ほしよみ堂」youtubeチャンネル
  • 占い師募集

占いのことなら|ほしよみ堂 > ブログ > パワハラ上司が処分されない会社に失望した時 ――乾為天初爻が教える「怒りを力に変える前の沈黙」