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曽我部 キキョウ

「昔はよかった」は今を映す ~懐かしいのは時代か、自分か

昔はよかった。

結構使っていませんか。

 

昔の方が、自然が豊かだった。

昔の方が、人情味があった。

昔の方が、幸せを感じやすかった。

 

バリエーションはありますが

「昔」の方が「今」よりも

よかったという評価は一緒です。

 

けれども、その人が懐かしむ「昔」は、

一体いつのことなのでしょう。

 

昭和の高度成長期を経験した人が、

令和の今を憂えて

昔はよかったと言ったとき、

昭和時代はよかったということ。

 

一方で、その高度成長期に

ある程度の歳を重ねた人が

昔はよかったと言えば、

きっと大正時代のことです。

 

こうしてさかのぼっていくと、

「昔」が原始時代まで戻ってしまいます。

 

ところが誰も、狩猟生活がよかったとは

思っていないのです。

つまり、「昔」とは

その人が生きていた過去に限定されます。

 

なぜ人は、「昔はよかった」と思うのでしょう。

 

記憶とは、過去の記録ではありません。

全てを細部まで、

均等に覚えているわけではないのです。

 

例えば、子どもの頃を懐かしむとき、

何を思い出しますか。

授業中に、上手く答えられなくて悲しかったこと?

それとも、家族で旅行に行ったときに見たSL?

 

不思議と楽しいことの方が

印象に残っているものです。

 

「昔はよかった」と言ったとき、

人はその時代を懐かしんでいるように見えて

その実、その時代にいた自分を

懐かしんでいる場合が多くあります。

 

ところで、「昔はよかった」と懐かしんでいるとき、

実際に見ているのは、本当に過去だと思いますか。

 

むしろ、今の時代に対して、

不満や不安などのマイナス面を感じるから

昔の方が輝いて見えるのではないでしょうか。

 

将来への不安。

変化について行けない自分。

忙しすぎる毎日。

 

こういうものに押しつぶされそうなとき、

過去がより魅力的に映ります。

 

昔はよかった。

そう言ったとき、実際には

過去の評価というよりも、

現在の心境を大きく反映しています。

 

昔を懐かしむこと自体は

悪いことではありません。

 

ただ、その時に、

ノスタルジーに浸るだけでなく

今の自分を眺めてみるのも

いいのかもしれません。

 

昔が輝くのは

その時が特別だからではなく

現在の自分が

何かを求めているからではないでしょうか。

 

 

※過去の記事はこちらでご覧いただけます。

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