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曽我部 キキョウ

本人の意思表示だけでは足りない

家族で生活をしていると、

誰かが突然、「自分はこうしたいんだけど」と

意思表示をすることがあります。

 

例えば、来年から高校に進学する息子さん。

「俺、東京の私立高校へ行きたいんだけど」

寝耳に水の話でなくても、

おそらく親は反対します。

 

そんなお金はうちにない。

住むところはどうするの。

どうして隣町の公立高校じゃだめなの。

 

家族会議を開催するかどうかはともかく、

とことん話し合って、

妥協点を見つけなくてはなりません。

 

ところが、不思議なことに、

高齢者と同居している家庭では、

「本人の意思を尊重する」というのが

少し違った様相を呈しています。

 

その高齢者が「家にいたい」と

口にすると、それだけで

介護施設へ預けることが

非難の対象になりかねないのです。

 

家にいたがる老人を無理やり施設に入れるとは

なんて冷たい家族だろう、ということです。

 

しかし、よく考えるまでもなく、

高齢者の介護は、

その本人だけの問題ではありません。

 

実際に介護をする人も含め

家族全員の問題でもあります。

 

また、高齢者の場合、認知能力の問題もあります。

「家にいたい」という場合の、「家」とは

どのような状態の家を言っているのでしょう。

 

参考までに私事を言いますと、

母は介護施設におり、「家に帰りたい」と言います。

しかし、彼女は、自分の夫が亡くなっていることを

認識しておりません。

 

母の思い描く「家」は、

仏間に父の遺影が飾られた「家」ではないのです。

 

自分がかつて住んでいた、

楽しい思い出が詰まった場所。

それを家と呼んでいるのです。

 

また、介護をできる家族がいるかどうかも

考える必要があります。

 

四六時中、気を張っていなくてはなりません。

事故に遭わないように。

一人で外へ出てしまわないように。

 

要介護度にもよりますが、

働きながらできるかというと

困難な場合も多いでしょう。

 

本人の意思を尊重するというと

とても美しいことのように聞こえます。

 

けれども、現実はそんなに簡単ではありません。

本人が言っているから。

それだけでは足りません。

 

本人は状況を把握し、

理解したうえで言っているか。

その望みを実現するためには、

誰が何を負担するのか。

 

ここまで考えてこそ、

本人の意思を尊重することに

なるのではないでしょうか。

 

選べる道を増やす、もう一つの見方を
曽我部キキョウ

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