あぐり
ポジティブシンキングについていけない時 風地観・三爻が告げる「無理に明るくなる前に、自分の現実を静かに観る」
「ネガティブなことは考えないほうがいいよ」
「もっと前向きに考えたほうがいいよ」
友人や仲間、同僚から、そんな言葉をかけられることがあります。
もちろん、相手は励ましてくれているのかもしれません。暗い気持ちに沈まないように、少しでも元気になってほしいと思っているのかもしれません。
けれど、現実が本当に苦しい時、その言葉はかえって心に重く響くことがあります。
私の毎日は、そんなに楽しくない。
そんなに楽でもない。
簡単に「前向きに」と言われても、心がついていかない。
そんな時、無理に明るくなろうとすると、自分の本音を置き去りにしてしまいます。
今回のご相談に対して易を立てたところ、出た卦は 風地観・三爻 でした。
風地観は、「観る」ことを意味する卦です。
ただ目の前を見るのではありません。人の言葉、自分の心、置かれている環境、人生の流れを、少し高いところから静かに見つめる。そこにこの卦の智慧があります。
そして三爻には、
「我が生を観て、進退す」
という意味があります。
これは、人の意見に流されて進むのではなく、自分の生き方、自分の現実、自分の心の状態をよく観て、進むべきか、退くべきかを決めるということです。
つまり風地観・三爻は、こう告げています。
無理にポジティブになろうとする前に、まず自分の現実を正しく観なさい。
苦しいものは苦しい。
疲れているものは疲れている。
傷ついているものは傷ついている。
それを認めることは、決して後ろ向きではありません。むしろ、自分を救うための第一歩です。
ポジティブシンキングの危うさは、現実を見ないまま「大丈夫」と言い聞かせてしまうところにあります。
雨が降っているのに、「晴れていると思えばいい」と言われても、身体は濡れます。
寒い部屋にいるのに、「暖かいと思えばいい」と言われても、身体は冷えていきます。
まず必要なのは、「雨が降っている」「ここは寒い」と認めることです。
そこから初めて、傘を差す、上着を羽織る、場所を変える、助けを求めるという現実的な行動が生まれます。
ネガティブな感情も同じです。
それは単なる悪い思考ではありません。
「もう無理をしている」
「本当は傷ついている」
「この環境は合っていない」
「私は大切にされていないと感じている」
そうした心からの知らせであることがあります。
ですから、ネガティブを敵にしなくてよいのです。
大切なのは、その感情に飲み込まれることではなく、静かに観ることです。
「私は何に傷ついているのか」
「何を我慢しすぎているのか」
「本当は、どんな言葉をかけてほしかったのか」
「今の場所で進むべきなのか、少し距離を置くべきなのか」
こう問いかけることが、風地観・三爻の実践です。
周囲の人が「前向きに」と言っても、その言葉があなたの現実を見ていないなら、無理に受け入れなくてかまいません。
誰かが軽く扱ったとしても、自分まで自分の苦しさを軽く扱う必要はないのです。
潜在意識の書き換えとして見るなら、
「ネガティブな私はダメだ」
「明るくなれない私は弱い」
という思い込みを手放す時です。
代わりに、こう心に刻んでください。
私は、苦しさを感じてもよい。
私は、自分の現実を正直に見つめてもよい。
私は、無理に明るくならなくても、静かに立ち直っていける。
ポジティブになれない時があっても、それはあなたが弱いからではありません。
現実を軽く扱う言葉に、心が違和感を覚えているだけです。
その違和感は、大切な感覚です。
風地観・三爻は、他人の明るい言葉に合わせる卦ではありません。
自分の人生をよく観て、自分の歩幅で進退を決める卦です。
無理に光を作らなくても大丈夫です。
まずは、今いる場所の暗さを静かに観ること。
そのまなざしの中から、やがて本当に必要な一歩が見えてきます。






